冒頭に『ワイルド・ギース』のダイジェストをくっつけたり、亡くなったリチャード・バートンの代打の弟設定でエドワード・フォックスを登場させたりと、何とか無理やり続編として売りたかったようですが、前作の男気に溢れた傭兵アクションに感激した人が観ると完全に肩透かしを食らうかも… 劇場未公開だったってもしかしてこれが原因?
しかしこれはこれで前作から独立した全くの別物として観るべきで、プロットに多少無理があるものの(何しろルドルフ・ヘスを脱獄させちゃう話ですから…)、映画としては東西冷戦下のベルリンを舞台にした逸品に仕上がっていてそれなりに楽しめます… 東西両陣営や過激派集団との謀略渦巻く鬩ぎ合いの展開が、派手なドンパチがラストを飾るいわゆる傭兵物にはならずに、フレデリック・フォーサイスやジョン・ル・カレ原作のクールで上質なスパイ・サスペンス映画の味わいになりました… それにしても幾ら冷戦下のベルリンとはいえやたらと登場人物が殺されていきますねぇ…
傭兵物映画でお馴染みの人員や武器の調達&準備の描写も大変丁寧で解りやすく、作戦実行シーンも余り嘘っぽさが無くリアルな感じで推移し、全体を通じて『スパイ大作戦』を観ているような気分になります…レジナルド・ローズの脚本の上手さと監督ピーター・ハントの手堅くて張ったりの無い演出(物足りない人もいるかも…)が効いてますね。
いつもながらスコット・グレンの抑制の効いた寡黙でストイックな感じがいいですねぇ… 時代が時代なら『荒野の七人』のブリット役/ジェームス・コバーンなんて配役もピッタリだったんですけど…
エドワード・フォックスはだいぶ肉付きが良くなっていて昔の精悍さが衰えましたが、ベランダで銃を構える姿…標的を見つめ首を傾げるポーズはあの"ジャッカル"を彷彿とさせ久々に痺れました…
バーバラ・カレラもグチョグチョ涙顔がとってもリアルで、単なるイロドリに終わらず予想外に頑張ってましたね…
後年"エンタープライズ号艦長"で宇宙を駆け巡る事になるパトリック・スチュワートが意外な役で出てくるのでお楽しみに…