各曲の元になったアルバムがジャケット写真入りで掲載されているのも親切。
M1はコルトレーンの『バラード』の冒頭に収録されている「Say it」。普通こういったジャズ・
アルバムは、もっとノリのいい、例えば「Moment's Notice」みたいな曲から始めていくが、
バラード始まりなのは意外。
M2は、ジャズ史の中でも最も充実した1枚でもあるオリヴァー・ネルソンの『ブルースと抽象の
真実』。ここでエリック・ドルフィーのフルートが聴けるし、ネルソンの深みのあるサックスも
味わい深い。ピアノはビル・エヴァンス。
M3は初期(インパルス時代)キース・ジャレットの「基本アメリカン・カルテット」の演奏で
「宝島」。E・ギターも加わってアーシーな感じの仕上がり。ソロ・ピアノで演奏される時には、
後半に延々とつづくオスティナートが印象的。
黒々としたアーチー・シェップの世界を経て、ローランド・カークのサックスで「Fly me to the
moon」。クインシー・ジョーンズのゴージャスなブラス・アンサンブル。M7はシェリー・マン+
ジョージ・デュヴィヴィエ+ハンク・ジョーンズのバッキングでコールマン・ホーキンスのサックスを
味わう。M8はマッコイ・タイナーのピアノ・トリオ曲だが、ブロックコードを叩きつけるマッコイ
ではなく、可憐にシングル・ノートをくり出すチャーミングな一面に光をあてている。ラストM14も
コルトレーンのしっとりとしたバラードで、ジョニー・ハートマンのボーカルと共演したもの。
こういうコンピレーション盤に”本格”を期待するのは、お門違い。帯にも「この1枚からジャズを
はじめよう」とある。そういう性質のものであり、気楽に流してBGM的に聴けばいい。ジャズ・
ファンの中には妙な純血主義や深刻さを尊ぶ風潮があるが、ジャズなど好きに勝手に聴けばいいだけ
なので、それらは無視していい。