ヴォーカル、ギター(主にアコースティック)、ベース、ドラムのみのシンプルな構成。なのに実に、静かなようでいてポップで饒舌なサウンド。ボサノバやジャズ、ブルースなどを吸収しつつジャンルの枠に収まらないオリジナリティ。ポコペンさんの、可憐さと生々しさを自在に行き来するヴォーカル。憂鬱なんだけれどどこかひっかかるメロディーライン。気取らずシンプルなんだけれど心に残る詞の世界。
なんというか、この年にしてここまでずっと聴きたいと思える1枚にめぐり会えるとは思ってもいなかった。
日本の女性ヴォーカリストといえば、かわいこちゃん系・セクシー系・母性系・要はヴォーカリストである前に「女」であるということを売りにしているもの、そうでなければ無理に「女」であることを排除しようとして妙に優等生然としてしまっているもの、そうでなければとにかく歌唱力や声量だけを売り物にするいわゆるディーバ系、くらいしかなくて、いずれにしても聴くのがしんどかった。
ポコペンさんはこのうちのどれにもあてはまらない。
歌唱力はかなりある方で、ソウルフルな歌い方も出来るけれども、そっちのほうに染まり切らない。「ぼく」という一人称も使うけれども「女性であること」を排除するわけではない。また、妙に女らしさを前面に出す曲もない。「中性的」というわけでもない。とにかくどのカテゴリーからもすっと身をかわすようなたたずまいが実に魅力的な女性ヴォーカリストなのである。こんな人は初めてだ。
また、彼女をサポートするギターの西脇氏のたたずまいもかっこいい。曲はポコペンさんと西脇氏が半分ずつ書いているようだが、彼のメロディーもとてもきれいである。「サマータイム」は日本の夏の隠れた名曲。絵も曲もひっくるめて、どこか怖いような懐かしいような、独自のさかなワールドが出来上がっている。
一日の仕事が終わり、さわやかな飲み物を探すように、リラックスタイムのおともにこの一枚を。