ジャクソンファイヴのベストだが、僕はとにかくマイケルの子供時代を知りたくて、これを買った。マイケル・ジャクソンという20世紀最大のポップスターにして、現在は人間から程遠い世界に行ってしまった男の原点が聴いてみたかったからだ。
ここにはまさしく幼き時代のマイケルを堪能できるトラックが詰まっている。父親がモータウンに売り込んで成功への階段を登っていったジャクソン5だったが、これを聴くと、その成功の理由はやはりマイケルにあるということが分かる。天性のリズム感、透き通った歌声、そして歌に対する熱いパッション全てがものすごく高いレベルで発揮されている。まさに天才少年という言葉がふさわしい。もっとアクの強さがあるかと思っていたが、ここで聴けるのは、ピュアで真っ直ぐな少年の感性のみである。
それはリズム感のある曲よりも、バラードではっきりと分かる。特に、ジャクソン5時代のマイケルのソロアルバムから選ばれたM10"GOT TO BE THERE"など、けがれを知らない純粋なマイケルの姿が目に浮かんできて、思わず聴いていて涙が出そうなほどだ。
分かったのは、マイケルが明らかに飛びぬけていた事実と、最初からソウルの枠には収まらないスター性を携えていたということだ。もしかしたらマイケルは肥大化していったミュージックビジネスのやり方に飲み込まれていった被害者かもしれない。