好きな映画ベスト5を挙げて下さいと問われると、その時々で答えは違ってしまうのだけれど、必ず入るのがこの『インディア・ソング』。ある夏の日、パリで(ひとりで)初めて見たとき、午頃からの上映だったのだけれど、3時頃映画館から出て来て、その愛 and/or 狂気の世界にはまってしまって、何をするでもなくカフェのテラスにボーッと3時間ぐらい座っていた。
ピーター・ブルックの『雨のしのび逢い』も、日本で大衆的にデュラスの代名詞のような『ラマン』も、原作がデュラスというだけで映画そのものはデュラスの作品世界とは程遠い。そうした意味でこれは紛れもなくデュラスの世界。映画でではなく小説でこの世界を味わいたければ、『モデラート・カンタービレ』や『副領事』や『ロル・V・シュタインの歓喜』などの読書がオススメ。最初のは映画『雨のしのび逢い』の原作であり、後の2つは映画『インディア・ソング』の関連作品だ。映画化されたものの原作という意味では『夏の夜の10時半』もオススメ。
そういえばこの『インディア・ソング』がカンヌで上映されたとき寺山修司氏が強い関心を示した報告を書いていて、数年後には自作映画で『インディア・ソング』の声の使い方を模倣していた。