グールドの代表作は、センセーショナルなデビューを飾った、この1955年録音の「Goldberg Variations」だ。
しかし、音は悪い。
モノラルのため、左右の広がりはなく、再生される「高音域から低音域の幅(ダイナミックレンジ)」が狭い。なので、聴いていて、極めて、のっぺりした平面的な印象を受ける。
録音された当初の音は、現在よりも、若干、良かったのではないかと思われるが、なにしろ、磁気テープは経年劣化が進み、時間が経つにつれて、記録された情報がどんどん失われていく……。
それを防ぐために、新しい磁気テープにコピーしたとしても、さらに音が悪くなる。昔、カセットテープからカセットテープへのダビングをして、音が悪くなった経験を持つ人には納得の話だろう。
磁気テープの情報をデジタル情報に変換すれば大丈夫なのだが、世界初のデジタル録音は1972年。それまで、音楽業界は、保存環境を良くして、磁気テープの劣化を最小限に食い止めるしか手がなかった。
そんな音の悪い1955年録音の「Goldberg Variations」だが、現在でも、なお、聴き手を惹きつけてやまない猛烈な魅力に溢れている。
それは、このアルバム一枚で、世界を仰天・震撼させたグールドの才気が、音楽から、ほとばしっているからだ。
それを最良、最高の形で聴けるCD盤は、どれになるのだろう?
1955年録音の「Goldberg Variations」は、ざっと見ただけでも、SACDを除外すると、私の手元には、以下の5種類がある。
(1)2020年盤(極HiFiCD)
(2)2007年盤(擬似ステレオ)
(3)2002年盤 (MASTER SOUND)【A State of Wonder】
(4)1992年盤(Super 20bit Mastering)
(5)1988年盤
どの盤がベストなのだろう?
その答えは(4)1992年盤(Super 20bit Mastering)だ。
「擬似ステレオ」という言葉に惹かれる人もいるかもしれないが、なんのことはない。モノラルの原音を右チャンネルに、その残響を左チャンネルに上手に振って、ステレオのような広がりを持たせているに過ぎない。ついでにイコライジングをし、高音域を強調しているので、一瞬、音が良くなったかのような錯覚をするが、肝心の音楽に乗るグールドの覇気が失われてしまった。
2020年盤も2002年盤も、なんとか音を良くしようと頑張っているが、もがけば、もがくほどに、音に作為を施すと、グールドの魂が遠のいてしまう。無理に、音を良くしようと、電気的な処理を加えれば加えるほど、アコースティックな魅力は減じてしまうということだ。
しかし、1992年盤(Super 20bit Mastering)は違う。すべての盤の中で、音がナチュラルで、音に芯があり、それゆえ、グールドの「音に乗った魂」が生きている。でも、音は悪い。しかし、その音の悪さを忘れるほど、この盤の音の演奏は魅力的だ。
1992年盤(Super 20bit Mastering)は旧盤だからと、軽くみている人が多いが、ぜひ、耳にしてもらいたい。
以上、原音が良くわかると定評のソニーのモニターヘッドホンのMDR-CD900STで聴いて比較してみました。参考になれば幸いです。
バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1955年モノラル録音)
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, 2020/11/25
"もう一度試してください。" | 1枚組 | ¥1,518 | ¥1,280 |
CD, 2022/12/15
"もう一度試してください。" | 通常盤 | ¥2,617 | — |
CD, CD, インポート, 2007/9/3
"もう一度試してください。" | 通常盤 |
—
| ¥2,478 | ¥404 |
CD, インポート, 1987/9/21
"もう一度試してください。" | インポート |
—
| ¥3,562 | ¥239 |
CD, CD, 2016/12/7
"もう一度試してください。" | 通常盤 |
—
| ¥5,308 | ¥590 |
CD, 2012/12/5
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| ¥10,747 | ¥1,580 |
CD, 2004/11/17
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1 |
CD, 2000/11/1
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥28 |
CD, 2008/11/19
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥162 |
CD, 限定版, 1997/10/1
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥449 |
CD, CD, オリジナルレコーディングのリマスター, 2003/9/30
"もう一度試してください。" | CD, オリジナルレコーディングのリマスター | — | ¥556 |
CD, 限定版, 2007/3/7
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥699 |
CD, CD, インポート, 2013/5/3
"もう一度試してください。" | CD, インポート |
—
| — | ¥14,579 |
CD, 限定版, 2006/11/22
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| — | ¥31,030 |
CD, インポート, 2011/1/7
"もう一度試してください。" | インポート |
—
| — | — |
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曲目リスト
1 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 アリア |
2 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第1変奏 |
3 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第2変奏 |
4 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第3変奏 |
5 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第4変奏 |
6 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第5変奏 |
7 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第6変奏 |
8 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第7変奏 |
9 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第8変奏 |
10 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第9変奏 |
11 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第10変奏 |
12 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第11変奏 |
13 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第12変奏 |
14 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第13変奏 |
15 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第14変奏 |
16 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第15変奏 |
17 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第16変奏 |
18 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第17変奏 |
19 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第18変奏 |
20 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第19変奏 |
21 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第20変奏 |
22 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第21変奏 |
23 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第22変奏 |
24 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第23変奏 |
25 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第24変奏 |
26 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第25変奏 |
27 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第26変奏 |
28 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第27変奏 |
29 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第28変奏 |
30 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第29変奏 |
31 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 第30変奏 |
32 | ゴールドベルク変奏曲 BWV988 アリア |
商品の説明
内容紹介
明確なリズム、引き込まれるような鋭利なアプローチが光る、衝撃のデビュー盤。
メディア掲載レビューほか
`ベスト・クラシック 100`シリーズから、ピアニスト、グレン・グールド編。バッハの作品を演奏した、1955年録音盤。 (C)RS
登録情報
- メーカー : ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- EAN : 4547366017298
- 時間 : 38 分
- レーベル : ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- ASIN : B0002ZEZUE
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 177,803位ミュージック (ミュージックの売れ筋ランキングを見る)
- - 5,814位室内楽・器楽曲
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年2月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年8月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
グールドのゴールドベルグ、55年録音のもので、若々しくて気持ちがいいほどのゴールドベルグです。
2023年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ゴールドベルクの演奏としては全く標準的では無い超個性的な、少しジャズ的要素すら感じる演奏だが何故か心にぐっと染み入って来る演奏で、バッハを自由にグールドの感性で表現した芸術として人々の感動を呼び起こすという意味で唯一無二のパフォーマンスだと感じられる。録音や重量盤音質もCDやハイレゾ配信より素晴らしくLPレコードで聴ける喜びを感じられるもの(B面最初では有名な彼の唸り声もはっきり聞き取れる)
2023年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安らぎを与えてくれるタッチ音が流れる
2024年2月17日に日本でレビュー済み
全曲演奏時間およそ39分。当時23歳の青年グレン・グールドは颯爽と駆け抜け、全世界に衝撃を与えた。
ここから彼の奇跡は始まったし、大バッハの鍵盤作品の地平を大きく切り開いた金字塔的名盤である。「あ
れは、もうこれ以上のことが考えられない名盤であり、ああいう演奏があったということが奇跡だ」と、か
の吉田秀和氏は評している。
ここから彼の奇跡は始まったし、大バッハの鍵盤作品の地平を大きく切り開いた金字塔的名盤である。「あ
れは、もうこれ以上のことが考えられない名盤であり、ああいう演奏があったということが奇跡だ」と、か
の吉田秀和氏は評している。
2022年10月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
モノラル録音であるが、最近の機械だよりの収録盤に比べ非常に高いスキルで録音されており、
SACDと比べても甲乙つけがたいと思う。(いやむしろこのCDの方が心に響く)
グールドの演奏も、迷いを感じるが(後の発表盤を聞いているから)素晴らしい名演奏だと思う。
キースジャレットはきっとこの盤の演奏に心打たれて、
日本でのチェンバロでの演奏をしたのではないか。
グールド信者ならず、すべての音楽好きに聴いてほしい一枚であると思う。
SACDと比べても甲乙つけがたいと思う。(いやむしろこのCDの方が心に響く)
グールドの演奏も、迷いを感じるが(後の発表盤を聞いているから)素晴らしい名演奏だと思う。
キースジャレットはきっとこの盤の演奏に心打たれて、
日本でのチェンバロでの演奏をしたのではないか。
グールド信者ならず、すべての音楽好きに聴いてほしい一枚であると思う。
2023年9月5日に日本でレビュー済み
このCDはグールドが生涯2度録音した同曲の最初のものであり、彼のデビュー盤である。
2度目のものとどちらが優れているかは、一言では言い得ないが、
できれば双方の演奏を聴くことをお勧めする。
この最初の録音はモノラル盤(1955年録音)であり、発売当初は世界を驚かせたものだ。
まだ世の人々にあまり知られていないこの曲を世界中に知らしめた名演である。
ゴールドベルク変奏曲には、グールドの魔法が掛けられている。
リスナーも必ずグールドの演奏について語り始める。
確かにグールドは、退屈といわれていたこの曲を、
ピアノ曲の豊かな可能性の中に導き出し、その音楽的価値を証明してみせた。
彼の天才は、誰も解釈しなかった鍵盤楽器の可能性を、
独自の観点によって創造したことにある。
しかも、その独自性は誰の助けも借りない究極のオリジナリティから
生み出されたのである。天才とは、それまで凡庸と思われていたものに、
息を吹き込み生命を与えることができる人のことである。
グールドの最初の録音から現在まで、依然としてなお、
この曲についてのグールド伝説は続いている。裏を返せば、だれも
この曲のピアノ演奏においては、グールドを乗り越えられなかったということでもある。
バッハ演奏の対位法的側面を誰よりも意識していたグールドの解釈には、やはり、
聴く者へと強烈に迫ってくる彼固有の説得力があるのは間違いない。
結局は、他の多くのピアニストたちの試みは、グールドほどの説得力を持ち得なかった
ということになってしまいそうである。
まず申し上げなければならないのは、グールドのピアノ音楽は、
作曲家のピアノ作品を徹底的に構造的に解釈し、和声の分析を行い、
その和音上の関係性の中で演奏しているということである。
このような解釈を行うことで、演奏上あまり影響を受けないのがバロック音楽である。
特に何よりも和声を重視し、その意味で誰よりも素晴らしい作品を生み出したバッハにおいて、
グールドの演奏が最高のパフォーマンスを提供するのは当然のことかもしれない。
グールドは数多いチェンバロ作品を、ピアノのために解釈し演奏したのであるが、
その中心にあるのは、ピアノでありながら強弱の変化がつけられないチェンバロのような、
ディナーミク的変化がない演奏方式である。
音色も単一なものとなり、ノンレガート奏法が多用されることになる。
みなさんご承知の通り、グールドがバッハ演奏をする限り、
全てがそのようなものになっている。
ときおり彼のピアノの音は「真珠(またはダイヤモンド)のような」と形容されているが、
果たしてそうだろうか、私は大いに疑問である。
彼は単一なノンレガート奏法を駆使しているだけである。
粒ぞろいの音であるだけで、ピアノ音そのものだけでいうならば、さほど美しくはない。
ゴールドベルク変奏曲に始まったグールドのバッハのピアノ音楽は、
一貫して、そのような対位法的ポリフォニー主体の音楽として存在しているのである。
その意味から、彼が演奏を嫌った作曲家が
ショパンとドビュッシーであるのは当然なことである。
ロマン派音楽は和声音楽を重視しながら、音の響きを大切にするものであるが、
中でもショパンやドビュッシーの音楽は、和声のみを主体とするだけではなく、
その和声さえ作曲者的ロマンチシズムの中で表現されるべきものとして重視される。
当然ピアノペダルの使用が大前提にもなってくる。
ノンレガートでは済まされない決定的な高いハードルがあるのだ。
加えて、楽譜には作曲者自身の細かな記述もあるのだから、
グールドは作曲者とは別の彼自身の音楽を主張したピアニストであるために、
彼の演奏は作曲者自身のものから自ずと乖離してゆくこととなる。
だからロマン派作品よりも即物的で人工的な作品でグールドの演奏は生きてくる。
情緒が全くないのだ。
ピアニストは作曲者に対する大きな尊敬の心がなければ、演奏は困難というものだ。
かつて、アンドラーシュ・シフはグールドのモーツァルトの演奏を聴いて、
「グールドにはモーツァルトをリスペクトする心が失われている」と述べた。
だから、彼がロマン派音楽よりもシェーンベルクのような現代音楽作品に向いているのも
容易に理解できるというものだ。あるいはハープシコードが活躍した時代の作品、
強弱変化の表現ができない作品群(=バロック音楽)が得意になる。
つまり基本的に彼は、頭で構造的な演奏をしているのだ。
彼の音楽には常に自分というものがあり、自分の解釈においてクラシック作品を分析し、
演奏しているようだ。言葉は悪いが、作曲家の作品を利用して
グールド自身の音楽を作ろうとしたと言えなくもない。
彼はスタジオで、つぎはぎだらけの録音テープを用いて、自分の好みの録音演奏を創作した。
もちろんグールドは優れたピアニストであるが、そのようなピアニストでもあることを
改めて聴き手は意識し、過大評価すべきではないことも理解すべきである。
彼の演奏には常に我の強い自分が存在している。
つまり彼は、クラシックのピアノ演奏者というよりも、
グレン・グールドという人物が前面に出たピアノ表現者なのである。
ただこの私は、凡庸なクラシック的演奏を行うピアニストよりも、
グールドのバッハ演奏を好んでしまうということも正直に告白したい。
つまりはグールドのバッハは、彼固有の音楽として成立しており、
他のピアニストと比較できない音楽なのだ。
しかしながら、グールドをほめそやす風潮には注意が必要だということも言い添えておきたい。
もし私がバッハの鍵盤演奏を誰かにすすめるときには、グールドは外したい。
同じバッハ演奏でも、リヒテルの平均率クラヴィーア全集で示されたような、
グールドのバッハより遥かに壮大で深淵な音楽世界があるということを知っていただきたい。
またGoldbergに限れば、マリア・ティーポやマレイ・ペライア、シュ・シャオ=メイ、
そしてニコラ・アンゲリシュのCD演奏は、もはやグールドを凌駕している。
彼らの演奏にはバッハが先に存在してから再現者としての自分がいる。
これがバッハを演奏するピアニストの正常な姿というものではないだろうか。
2度目のものとどちらが優れているかは、一言では言い得ないが、
できれば双方の演奏を聴くことをお勧めする。
この最初の録音はモノラル盤(1955年録音)であり、発売当初は世界を驚かせたものだ。
まだ世の人々にあまり知られていないこの曲を世界中に知らしめた名演である。
ゴールドベルク変奏曲には、グールドの魔法が掛けられている。
リスナーも必ずグールドの演奏について語り始める。
確かにグールドは、退屈といわれていたこの曲を、
ピアノ曲の豊かな可能性の中に導き出し、その音楽的価値を証明してみせた。
彼の天才は、誰も解釈しなかった鍵盤楽器の可能性を、
独自の観点によって創造したことにある。
しかも、その独自性は誰の助けも借りない究極のオリジナリティから
生み出されたのである。天才とは、それまで凡庸と思われていたものに、
息を吹き込み生命を与えることができる人のことである。
グールドの最初の録音から現在まで、依然としてなお、
この曲についてのグールド伝説は続いている。裏を返せば、だれも
この曲のピアノ演奏においては、グールドを乗り越えられなかったということでもある。
バッハ演奏の対位法的側面を誰よりも意識していたグールドの解釈には、やはり、
聴く者へと強烈に迫ってくる彼固有の説得力があるのは間違いない。
結局は、他の多くのピアニストたちの試みは、グールドほどの説得力を持ち得なかった
ということになってしまいそうである。
まず申し上げなければならないのは、グールドのピアノ音楽は、
作曲家のピアノ作品を徹底的に構造的に解釈し、和声の分析を行い、
その和音上の関係性の中で演奏しているということである。
このような解釈を行うことで、演奏上あまり影響を受けないのがバロック音楽である。
特に何よりも和声を重視し、その意味で誰よりも素晴らしい作品を生み出したバッハにおいて、
グールドの演奏が最高のパフォーマンスを提供するのは当然のことかもしれない。
グールドは数多いチェンバロ作品を、ピアノのために解釈し演奏したのであるが、
その中心にあるのは、ピアノでありながら強弱の変化がつけられないチェンバロのような、
ディナーミク的変化がない演奏方式である。
音色も単一なものとなり、ノンレガート奏法が多用されることになる。
みなさんご承知の通り、グールドがバッハ演奏をする限り、
全てがそのようなものになっている。
ときおり彼のピアノの音は「真珠(またはダイヤモンド)のような」と形容されているが、
果たしてそうだろうか、私は大いに疑問である。
彼は単一なノンレガート奏法を駆使しているだけである。
粒ぞろいの音であるだけで、ピアノ音そのものだけでいうならば、さほど美しくはない。
ゴールドベルク変奏曲に始まったグールドのバッハのピアノ音楽は、
一貫して、そのような対位法的ポリフォニー主体の音楽として存在しているのである。
その意味から、彼が演奏を嫌った作曲家が
ショパンとドビュッシーであるのは当然なことである。
ロマン派音楽は和声音楽を重視しながら、音の響きを大切にするものであるが、
中でもショパンやドビュッシーの音楽は、和声のみを主体とするだけではなく、
その和声さえ作曲者的ロマンチシズムの中で表現されるべきものとして重視される。
当然ピアノペダルの使用が大前提にもなってくる。
ノンレガートでは済まされない決定的な高いハードルがあるのだ。
加えて、楽譜には作曲者自身の細かな記述もあるのだから、
グールドは作曲者とは別の彼自身の音楽を主張したピアニストであるために、
彼の演奏は作曲者自身のものから自ずと乖離してゆくこととなる。
だからロマン派作品よりも即物的で人工的な作品でグールドの演奏は生きてくる。
情緒が全くないのだ。
ピアニストは作曲者に対する大きな尊敬の心がなければ、演奏は困難というものだ。
かつて、アンドラーシュ・シフはグールドのモーツァルトの演奏を聴いて、
「グールドにはモーツァルトをリスペクトする心が失われている」と述べた。
だから、彼がロマン派音楽よりもシェーンベルクのような現代音楽作品に向いているのも
容易に理解できるというものだ。あるいはハープシコードが活躍した時代の作品、
強弱変化の表現ができない作品群(=バロック音楽)が得意になる。
つまり基本的に彼は、頭で構造的な演奏をしているのだ。
彼の音楽には常に自分というものがあり、自分の解釈においてクラシック作品を分析し、
演奏しているようだ。言葉は悪いが、作曲家の作品を利用して
グールド自身の音楽を作ろうとしたと言えなくもない。
彼はスタジオで、つぎはぎだらけの録音テープを用いて、自分の好みの録音演奏を創作した。
もちろんグールドは優れたピアニストであるが、そのようなピアニストでもあることを
改めて聴き手は意識し、過大評価すべきではないことも理解すべきである。
彼の演奏には常に我の強い自分が存在している。
つまり彼は、クラシックのピアノ演奏者というよりも、
グレン・グールドという人物が前面に出たピアノ表現者なのである。
ただこの私は、凡庸なクラシック的演奏を行うピアニストよりも、
グールドのバッハ演奏を好んでしまうということも正直に告白したい。
つまりはグールドのバッハは、彼固有の音楽として成立しており、
他のピアニストと比較できない音楽なのだ。
しかしながら、グールドをほめそやす風潮には注意が必要だということも言い添えておきたい。
もし私がバッハの鍵盤演奏を誰かにすすめるときには、グールドは外したい。
同じバッハ演奏でも、リヒテルの平均率クラヴィーア全集で示されたような、
グールドのバッハより遥かに壮大で深淵な音楽世界があるということを知っていただきたい。
またGoldbergに限れば、マリア・ティーポやマレイ・ペライア、シュ・シャオ=メイ、
そしてニコラ・アンゲリシュのCD演奏は、もはやグールドを凌駕している。
彼らの演奏にはバッハが先に存在してから再現者としての自分がいる。
これがバッハを演奏するピアニストの正常な姿というものではないだろうか。
2022年12月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作業にBGMとして聴くには最高なんです
運転にも良い
ただ、ぐれんぐーるど氏の特徴である
つぶやきは聞こえなくて
残念です。
運転にも良い
ただ、ぐれんぐーるど氏の特徴である
つぶやきは聞こえなくて
残念です。
他の国からのトップレビュー
JVC
5つ星のうち5.0
Fantástico
2024年5月6日にスペインでレビュー済みAmazonで購入
Grabación justamente famosa por la que deben medirse todas las demás. El vinilo suena fantásticamente y es una gozada su audición. Esta vez se ha hecho un gran trabajo de puesta al día...para volver a los orígenes - he optado por su formato en vinilo-. Ironías de la vida. Escucharé muchas veces este disco. Gracias.
Muss man gehört haben
5つ星のうち5.0
Klassiker
2023年8月9日にドイツでレビュー済みAmazonで購入
Würde es wieder kaufen 👍
Staffan Bjärle
5つ星のうち4.0
Hyfsad
スウェーデンで2022年11月16日にレビュー済みAmazonで購入
Hyfsad med tanke på inspelningens ålder men låter inte på topp.
david cabrera lechuga
5つ星のうち5.0
excelente disco
2019年10月7日にメキシコでレビュー済みAmazonで購入
El disco que adquirí por Amazon es una verdadera joya, muy disfrutable la composición y la ejecución. Como siempre, la entrega fue puntual y confiable.
massimo restivo
5つ星のうち5.0
Un LP straordinario
2020年11月28日にイタリアでレビュー済みAmazonで購入
È molto difficile recensire un genio musicale come Gould, comunque il disco è davvero bello e sentito più volte regala sempre nuove emozioni.
Lo consiglio a tutti i veri appassionati di musica classica, il calore dell’LP lo trovo davvero magico.
Max
Lo consiglio a tutti i veri appassionati di musica classica, il calore dell’LP lo trovo davvero magico.
Max