サクラ大戦は、単なる女の子と恋愛するギャルゲーではない。
一つは、隊員たち少女たちの心の成長
もう一つは、隊長としてのプレイヤーの成長
そしてここが重要だが、米田中将の世代継承(生き様)
を描いた物語である。(以下一部ネタバレあり)
一つ目は、いろいろな国や地域で育ち、それぞれが様々な問題を抱えながら、都市を守るという「任務」を与えられたとき
まだ多感な時期の少女たちが、その任務をどう受け止めていくか。
いわゆる一般的な「少女戦士」系のアニメでは省略されがちであるが、恋愛、結婚、自由な生活を犠牲にしてゆかりのない土地を守ることとなった少女たちの感情の動きとはこういうものである。
ましてや、生まれ育った環境の違う個性的な女性が一か所に集められて、「今から仲良くやりなさい」と言われても、
普通はできるものではない。それが、徐々に心を開きながら徐々に仲間として認めあい、華撃団を「ホーム」と感じられるようになるまでの、
少女たちの成長記録である。
二つ目は、この少女たちの成長をサポートする、隊長の成長も描かれている。
下心だけの上っ面のコミュニケーションは女性の心を開かないばかりか、むしろ信頼を失うこととなり
誠実に自分の信念を貫き通す強さと、この個性的な隊員達とのコミュニケーションをあきらめないことが必要であること、
と同時に隊員を信じ時には委ねる器の大きさが隊長、人をまとめる者に必要なスキルであるということを、
プレイヤーはゲームを進めていきながら学ぶのである。
そしてこれが最も大事なテーマであるが、製作者が述べているように「サクラ大戦は米田一基の物語である」。
自らの青春時代を戦友たちとともに都市防衛に費やすが、力遠く及ばず、戦友たちを全て亡くし、自分一人が生き残ってしまう。
軍人として、いかに惨めな想いであっただろうか。そればかりでなく、まだ年端もいかない少女たちを、自分が勝利できなかった戦いに
戦士として送り込む立場となり、自分の無力と同時にその罪悪感に苦しんだに違いない。
恋愛、結婚といった普通の女性の幸せを奪いながら、生き残ってしまった軍人 米田。
しかしそれと同時に彼は、少女たち、そしてプレイヤー(大神)に平和な未来、自由に生きられる未来を託していったのだろう。
自分の無力を知りながら、無様だと思う生き方を続けながらも、いざという時にはいつでも自分の尻拭いをする覚悟はできている。
そして引き際もわきまえている。次の担い手に、自分の功績や権力をすんなりと明け渡すだけの度量を持っている。
米田はそんなとてつもなくかっこいい男である。
サクラ大戦4は、期待度が高かっただけに、その短さに肩を落としたプレイヤーがいたようだが、
サクラ大戦1-3すべてへのオマージュが盛り込まれ、制作スタッフのサクラ愛を十分に感じる作品である。
また、隊員が13人もいることから、逆にこの短さはすべてのエンディングを攻略するのにちょうど良いと感じる。
何より、新曲「君よ花よ」、そしてラストのエンディングが、何とも言えない哀愁を感じさせてくれ、
最後の最後まで「太正ロマン」を感じさせる「サクラ大戦」であったと思う。