吉田喜重の前半は、アランレネ「去年マリエンバートで」に象徴される、ビジュアルアートの傑作を作っていた。女性の心がまるで、ガラスのようにもろい。
今村昌平の描くふてぶてしい女や、増村保造の描く執念の女と対象的である。
ところがこの映画はビジョンアートではない。イングマール・ベルイマンの描く女たちの葛藤と終末。親子を軸に原爆や戦争を経験した現実を受け入れない、生を受け入れない女たち。
音楽はジャンリュックゴダールのように、ドラマと無関係にリズムを刻む。
吉田喜重は一体どこへ行きたいのだろうか?凄まじい傑作である。