1948年公開のヒッチコック初のカラー作品だが、本編は80分と意外に短編の犯罪サスペンスだ。
だが、本作のテーマやプロット、演出には大胆な試みが多数仕掛けられ、驚くばかりだ。
先ず、戯曲に基づいた演出から、舞台はペントハウスの一室のみ。しかも片側からのカットしかない。
また、当時のフィルムカメラ撮影限界時間の15分の映像を6回繋ぎ合わせた、実質ワンショット映像だと言うこと。これは最近の邦画「カメラを止めるな!」やアカデミー賞作品の「バードマン」の原点に当たる。そして80分の映画の時間の流れが、そのまま劇中の午後から夕方、そして夜への時間と一致させてある。正にリアルタイム戯曲を映画化したのが本作だ。
次に、ストーリーは完全犯罪を目論む犯人を中心に見せながら、後から登場する主人公が真相を暴く、刑事コロンボ型で犯人を追い詰めるスタイルだ。
この型の特徴は、犯人を守ろうとする立場に観客が立たされ、糸口の発覚にハラハラしてしまう倒錯性にある。その辺りの演出はヒッチコック監督は抜群の味付けでスリリングな事この上ない。
3つ目に、犯人が殺人を犯した動機がかなり難解だ。恨みや金銭目的ではなく、“優秀性を証明する為”と言う信じがたいものだからだ。
これ以上は観てのお楽しみだが、ナチスドイツの優生思想を糾弾するのが本作の真の狙いなので、その悪し様をとくとご覧あれ。
最後に隠れた主張がもう一つある。
何故に犯人が二人とも、彼等と繋がりの深い主人公すらも男性なのか。当たり前のようで、犯人二人のやり取りを観ている内に、何故か引っ掛かり始める。
Blu-rayの特典映像でやっと氷解したのは、当時の米国映倫が脚本原案から“ある文言”を背徳的として削除した事が判ったからだ。
それがLGBT関連だから、先の優生思想や犠牲者の属性、登場人物達との関係性が一気に解けた。
マイノリティが自身の存在意義を社会に認めさせたい、それを証明する為の手段を誤り、非情さとなって暴発する。その哀しい末路を犯罪サスペンスに仕立てたのが本作なのだ。
そして正義の主人公ジェームス・スチュワートが犯した最大の過ちとは何か?に思考が至るとき、歴史や思想を正しく次世代の若者に伝える難しさを知る。再びナチスドイツや性的蔑視を生まないために。
ヒッチコックとは何処まで映画を計算し尽くすのか、心から驚愕する傑作です。
ロープ [DVD]
フォーマット | 色 |
コントリビュータ | ジェームズ・スチュアート, ファーリー・グレンジャー, アルフレッド・ヒッチコック |
言語 | 英語, スペイン語 |
稼働時間 | 1 時間 21 分 |
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商品の説明
Amazonより
エリート思想に塗り固められている男ふたりが、その優秀性を誇示したいがために大学の同級生を殺害し、さらにその殺人現場にてパーティを催し、スリルを楽しもうとするが…。
サスペンス映画の神様アルフレッド・ヒッチコック監督作品の中でも実験精神においては1、2を争うであろう作品。ここでは何と夕方から夜にかけてのおよそ90分の出来事を1シーン1カットで描くという前代未聞の冒険を行っており(撮影フィルムは1巻10分なので、終わりを人物の背中などに当て、そこをつなぎ目に次のフィルムを回していく)、そのため編集の妙によるテンポはゆるいが、決して固定されることのないめまぐるしいキャメラ・ワークなど一見の価値は大いにある。ストーリー自体もエリートと彼らの恩師(ジェームズ・スチュアート)との丁々発止の駆け引きなど、見ごたえは十分にある。(的田也寸志)
登録情報
- アスペクト比 : 1.33:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : 英語, スペイン語
- EAN : 4571130848153
- 監督 : アルフレッド・ヒッチコック
- メディア形式 : 色
- 時間 : 1 時間 21 分
- 発売日 : 2004/12/29
- 出演 : ジェームズ・スチュアート, ファーリー・グレンジャー
- 字幕: : 日本語, 英語
- 販売元 : ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- ASIN : B0006HBMAO
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 193,572位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 7,187位外国のミステリー・サスペンス映画
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2021年4月27日に日本でレビュー済み
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2023年10月13日に日本でレビュー済み
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これ、罪と罰ですよね。
ローぷ、映画でなくシアターでやってそう。
ローぷ、映画でなくシアターでやってそう。
2023年10月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これはホモの人たちの話なのねwww
どうもわかりにくいと思った。
それにしても拳銃をすぐ手放すのはどうなんだ?
そして主人公が急に主義を変えるのも、ホモだとあることなのかなー?ww
どうもわかりにくいと思った。
それにしても拳銃をすぐ手放すのはどうなんだ?
そして主人公が急に主義を変えるのも、ホモだとあることなのかなー?ww
2021年6月24日に日本でレビュー済み
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数年ぶりに「ロープ」を見た。改めて見直そうと思ったのは、最近読み終えた、エリック・ロメールとクロード・シャブロルの共著「ヒッチコック」がきっかけだった。
この映画は過去に3回見ていて、これまでは、完全犯罪を目論む愚かな若者を中心とした、比較的短い室内劇のような作品というイメージだったが、今回じっくりと見直して、様々な新たな発見があった。
殺人を犯す2人の若者は、彼らの恩師であるルパート(ジェームズ・スチュアート)に思想的に感化されているが、それは単なる教師と学生の関係でなく、彼らはホモセクシュアルであり、さらにルパートは只の教師ではなく、housemaster、つまり全寮制の学校の舎監だったと言う事と深く関係している。ルパートは2人の若者と性的に濃密な時間を過ごし、彼らはルパートの考えに染め上げられていったのであろう。
ただ、優れた者は自分よりも劣った者に対して生殺与奪の権利があるとする考え方は、舞台をイギリスからアメリカに移した事で難しくなった、という意味の事が特典映像の中で語られているが、確かに英国のような階級社会でupper classの人間がlower classの人間を見下して彼らは死んで当然だ、という設定の方が、ある程度納得できる。また、当初ジェームズ・メイスンをルパート役に考えていたようだが、役柄から考えてジェームズ・スチュアートのような偉丈夫よりもジェームズ・メイスンの方が適役だと思った。
2人の若者の歪んだエリート意識は、60年前の僕の中学時代を思い起こさせた。男子校の中学で級友の多くは、医師や病院経営者、会社経営者の子弟であり、出自は戦前の名門という者も多かった。級友達の中には、この映画の若者と似通った考えの持ち主も少なからず存在した。そして、自分自身を振り返って、自分にも同様の差別意識がないとは決して言いきれない事に思い至った。さらに、男子校故に、ちょっとホモセクシュアル的な雰囲気もあって、大柄な級友が女性的な容姿の級友を稚児にしていた事も思い出した。
ヒッチの作品の中ではやや異色だが、今見直すと、考えさせられる事の多い作品だった。
この映画は過去に3回見ていて、これまでは、完全犯罪を目論む愚かな若者を中心とした、比較的短い室内劇のような作品というイメージだったが、今回じっくりと見直して、様々な新たな発見があった。
殺人を犯す2人の若者は、彼らの恩師であるルパート(ジェームズ・スチュアート)に思想的に感化されているが、それは単なる教師と学生の関係でなく、彼らはホモセクシュアルであり、さらにルパートは只の教師ではなく、housemaster、つまり全寮制の学校の舎監だったと言う事と深く関係している。ルパートは2人の若者と性的に濃密な時間を過ごし、彼らはルパートの考えに染め上げられていったのであろう。
ただ、優れた者は自分よりも劣った者に対して生殺与奪の権利があるとする考え方は、舞台をイギリスからアメリカに移した事で難しくなった、という意味の事が特典映像の中で語られているが、確かに英国のような階級社会でupper classの人間がlower classの人間を見下して彼らは死んで当然だ、という設定の方が、ある程度納得できる。また、当初ジェームズ・メイスンをルパート役に考えていたようだが、役柄から考えてジェームズ・スチュアートのような偉丈夫よりもジェームズ・メイスンの方が適役だと思った。
2人の若者の歪んだエリート意識は、60年前の僕の中学時代を思い起こさせた。男子校の中学で級友の多くは、医師や病院経営者、会社経営者の子弟であり、出自は戦前の名門という者も多かった。級友達の中には、この映画の若者と似通った考えの持ち主も少なからず存在した。そして、自分自身を振り返って、自分にも同様の差別意識がないとは決して言いきれない事に思い至った。さらに、男子校故に、ちょっとホモセクシュアル的な雰囲気もあって、大柄な級友が女性的な容姿の級友を稚児にしていた事も思い出した。
ヒッチの作品の中ではやや異色だが、今見直すと、考えさせられる事の多い作品だった。
2020年10月15日に日本でレビュー済み
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ヒッチコック映画の好きなところは、何が正しく、何が誤りか、混乱させられドキドキするところなんだけど、この映画はそこがなかったので、私的には残念な映画。
初めから犯人が分かっていて、犯人の葛藤をみせるパターン。犯人は2人組で、大胆な人と、プレッシャーに押し潰されそうな人との2人。
犯行を自慢したい1人が殺人論について得意げに語る。もう1人は緊張しまくり、あわてまくる。2人の仲は険悪になったり協力したりで、犯行はバレるのか、逃げ切るのか?ってストーリー。
初めから犯人が分かっていて、犯人の葛藤をみせるパターン。犯人は2人組で、大胆な人と、プレッシャーに押し潰されそうな人との2人。
犯行を自慢したい1人が殺人論について得意げに語る。もう1人は緊張しまくり、あわてまくる。2人の仲は険悪になったり協力したりで、犯行はバレるのか、逃げ切るのか?ってストーリー。
2022年9月14日に日本でレビュー済み
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パーティーの一室で、もし自分の殺した死体が隠してあったら?という一つの状況を与えて話が展開していくシチュエーションドラマ。
首謀者は二人で、一人は堂々としているがもう一人はいつバレるか心配で仕方がない。
普段の何でもない会話もやましい事があると全く違って聞こえてしまうという心理描写が面白い。
首謀者は二人で、一人は堂々としているがもう一人はいつバレるか心配で仕方がない。
普段の何でもない会話もやましい事があると全く違って聞こえてしまうという心理描写が面白い。
2021年8月13日に日本でレビュー済み
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短い時間だったので、気まぐれにチェックしたこの映画。
途中から、ワンカット映像と気づく。伏線を上手にアップしたり引いたり、セリフに
人間関係をさりげなく入れたり。ウームと思わせる佳作です。
一時間ちょっとなのでテレビ映画かとおもったのですがそうでもないようです。
ジェームススチュワート、かっこいい。この人私生活もかっこいいのです。
途中から、ワンカット映像と気づく。伏線を上手にアップしたり引いたり、セリフに
人間関係をさりげなく入れたり。ウームと思わせる佳作です。
一時間ちょっとなのでテレビ映画かとおもったのですがそうでもないようです。
ジェームススチュワート、かっこいい。この人私生活もかっこいいのです。
2020年7月31日に日本でレビュー済み
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録音が比較的新しめなので聞きやすくて良いです。
サイコでおなじみヒッチコック監督のサスペンス映画。
ひとつの部屋の中だけで行われる日中から夜までのひと時。
そこに事件の真相があると知っていても周りの人間がつい偶然ふたを開けてしまいそうなシーンは
「おいおいおいおい」と手に汗握ってしまう瞬間があったりと別のハラハラがあります。
ワンカットに挑戦したのかと思いますが当時のカメラは15分が限界だったので一瞬背中をドアップにして画面を黒くしたうえで次のテープにつなげるなどの工夫をしたとか。(たまにつながってないシーンもありますが。)ついでに背景がだんだん暗くなっていくのはヒッチコック監督初のカラー映画。カラーという点を最大限に利用した感じがしますね。
サイコでおなじみヒッチコック監督のサスペンス映画。
ひとつの部屋の中だけで行われる日中から夜までのひと時。
そこに事件の真相があると知っていても周りの人間がつい偶然ふたを開けてしまいそうなシーンは
「おいおいおいおい」と手に汗握ってしまう瞬間があったりと別のハラハラがあります。
ワンカットに挑戦したのかと思いますが当時のカメラは15分が限界だったので一瞬背中をドアップにして画面を黒くしたうえで次のテープにつなげるなどの工夫をしたとか。(たまにつながってないシーンもありますが。)ついでに背景がだんだん暗くなっていくのはヒッチコック監督初のカラー映画。カラーという点を最大限に利用した感じがしますね。