ボビー・マクファーリンはホントにスゴイ。まず彼はジャズといわれる分野で初めて我が敬愛するウィーン・フィルを振った人物なのである。2003年9月のイギリスと、ルツェルン音楽祭の公演で、ボビー・マクファーリンがウィーン・フィルを指揮してプロコフィエフやモーツァルトやヴィヴァルディをやったのである。これはウィーン・フィルを知る人にとっても、ボビー・マクファーリンを知る人にとっても開いた口がふさがらないくらいビックリしたことだった。
で、本作『スポンティニアス・インヴェンションズ』だが、1986年2月にLAのアクエリアス・シアターで行われた彼のライヴだ。このライヴ、あるのは椅子とペリエの瓶だけ。あとは本人だけという恐るべきライヴなのだ。何しろ何処をたたいても、音楽になってしまう。観客をコーラス隊にしてしまったり、イコライザーの効いた多重録音みたいな声をやるかとも思えば、一人でオペラのシーンを全配役やってしまったり、オートバイになったりと、一瞬として同じ状態ではいなくて、しょっちゅう観客の中に入り込み、飛び回る。およそ考えられない『芸域』に到達してしまっている・・・・・。おそらくこの偉業にウィーン・フィルの面々が感激し(??!)、招聘に至ったに違いないだろう。うん。
ライヴが進むほどもうどんどん壊れていくというか、絶好調になる。そのあたりで何とウェイン・ショーターが飛び入りしてくるのである(!!!!!!!!!!!!!)。ショーターはソプラノ・サックスで『ウォーキン』を仕掛けてくるのだが、マクファーリンは当然応戦である。ここが最高だ。
そしてオマケとして彼の出世作、『ドント・ウォリー・ビー・ハッピー』と『グッド・ラヴィン』のPVが付いている。至れり尽くせりの作品である。