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ヨーヨー・マの音楽的キャパシティの途方もない広さが実感されるディスクだ。彼はもうすでにクラシック音楽のチェロ奏者にとどまらない、グローバルな音楽家になっている。ヨーヨー・マの前には、特権的・専門的な聴衆はありえない。彼は、世界中の音楽を誰にでも開かれたものとしているのだ。1枚のトータルなアルバムで聴くよりも、こうしたコンピレーション盤で聴いたほうが、ヨーヨー・マのそうした幅広さを実感できる。そういう意味でも、単なるベスト盤という次元を超えて、大いにオススメできるアルバムなのだ。
ドヴォルザークの「チェロ協奏曲第2楽章」やモーツァルトの「弦楽三重奏のためのディヴェルティメント」が、ジョビンやタン・ドゥンやシルクロードと同居する面白さは、想像以上にスリリングだ。演奏の一つひとつも、本当にすばらしい。例えば、「タイスの瞑想曲」(アルバム『パリ~ベル・エポック』から)。こんなにポピュラーな何度も耳にしたような小さな曲で、胸を突かれるような大きな感動を味わわせてくれるのは、ヨーヨー・マだけだろう。どの演奏も、単に感動するというよりは、痛みが伝わってくるくらいに切実で自由で、感覚に直接訴えてくる。これまでの彼をよく知っている人にも、このベスト盤はぜひ一聴をおすすめしたい。(林田直樹)
メディア掲載レビューほか
チェロ奏者、ヨーヨー・マの日本企画ベスト・アルバム。「クリスタル」「ミニーノ」「想いあふれて」「リベルタンゴ(ライヴ・ヴァージョン)」他を収録。