レビュー
[1]製作: 徐国良 製作進行: 李憲章/張華坤 監督: 侯孝賢 脚本: 呉念眞/朱天文 撮影: 李屏賓 照明: 劉義雄 美術: 劉志華/林鉅 録音: 折江盛/楊静安 編集: 廖慶松 音楽: 陳明章 出演: 王晶文/辛樹芬/李天録/林陽/梅芳/陳淑芳/頼徳南/林干竝/張復欽/楊麗音/施明揚/胡湘評/蘇玲[2]エグゼクティヴプロデューサー: 林登飛 プロデューサー: 徐国良 監督・脚本: 侯孝賢 監修: 許新枝 脚本: 朱天文 撮影: 李屏賓 出演: 遊安順/辛樹芬/田豊/梅芳/呉素瑩/陳淑芳/周棟宏[3]製作: 呉武夫/張華坤 監督・脚色・脚本: 侯孝賢 原作・脚色・脚本: 朱天文 企画: 許淑眞 撮影: 陳坤厚 録音: 析江盛 音楽: 廖慶松 出演: 王啓光/李淑楨/古軍/梅芳/楊徳昌/丁乃竺/陳博正/林秀玲/楊麗音/張鋤非/顔正国[4]製作・撮影: 陳坤厚 監督: 侯孝賢 原作・脚本: 朱天文 スクリプター: 林榮豊/張華坤 音楽: 李宗盛/蘇来 美術: 廖慶松 出演: 鈕承澤/張世/陳博正/趙鵬擧/李秀玲/張民齢/張純芳
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
同じ中華圏への旅行とはいえ、香港と台湾では訪れた時の印象はまったく異なるもの。イギリス統治領の伝統を残す街並み&資本主義の快楽、対するは日本統治の面影&南国の心地よいユルさ。両地の違いは映画の方向性にも大きく影響している。80年代、チョウ・ユンファやマギー・チャンが娯楽色たっぷりのアクションやコメディに出演していた香港映画。いっぽう、監督の個性が光る芸術作品でにわかに注目を浴び始めたのが台湾映画だった。日本の敗戦による復光の開放感が、いつしか国民党の強圧的な政権へ。政治に翻弄されながらも、義理人情を重んじて生きる人々の様子をとらえた作品は、日本人にも複雑な感情をもたらすことになる。 なかでも、淡々とした映像の中に郷愁と人生の儚さをとらえた侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の初期作品は、小津安二郎と比較されるほどに、おフランスなシネアストから、ごく普通の映画ファンの心をとらえるまでに到った。田舎暮らしで退屈しのぎに悪さをしている少年たち、不器用な恋愛と、その不器用さから味わう失恋。都会の喧噪に味わう孤独と、将来に対する漠然とした不安。カメラは寡黙な登場人物の表情を、同じように寡黙に写し取っていく。遠くでゴロゴロと鳴る雷、雨、雨上がり。急がず、慌てず。ただ空や風、湿度の変化を追うだけで、季節とそこでの思いが、観る者の体験と重なり合っていく。 ナレーションや説明的なセリフは不要。頑固な老人の渋面や、手持ち無沙汰な子どもが起こす反復行動から、微妙な家族関係と、根底に通う愛情は推し量れる。いや、単に駅や行き交う列車を眺めるようにしているだけで、歴史と、それとともに流れていく人の世を感じさせるのだ……。 (丸目蔵人) --- 2005年06月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)