若い奥さん(後妻)をもらった警官が、心機一転、新しい交番勤務で赴任した町の巡回区域には、前妻と中学生の娘が住んでいた…二人の女と娘、そして結婚に大反対だった後妻の母に翻弄される男…と、ヘタな脚本家だと、生きてるのがイヤになるようなドロドロ・陰惨なお話になるところを、シリアスな状況でもスルリと体をかわして笑いに転換してくれる。軽やかな流れの中にもドキッとするようなセリフがちりばめられ、愛らしさと切なさと健気さに満ちた、非常に良い塩梅の大人の寓話です。
特に、もし一瞬の輝きがその人の人生を全面的に肯定できるものなら、このドラマはまさにその瞬間だと思えるほど、宮沢りえさんが素敵です。時に誘うように、時には強がったりすがりつくように、奔放な前妻を妖精のように演じます。
他にも、最も複雑な人間関係に放り込まれ、「嘘つきすぎちゃって、何がホントか分からなくなった」多感な少女の小林涼子さん。「わたし歪んでるの」と優しさから自らの気持ちに素直になれず、表面的には明るく取り繕う後妻の牧瀬里穂さん。結婚に反対しながらも、自己嫌悪から身を引くために家をでた娘への言づてで「あなたが離婚するなら、私はあの女を刺すわよ」と言ってしまう後妻の母の吉田日出子さん。そんな女性たちに囲まれて右往左往するいたいけな男の岸谷五朗さん。永らく想いつづけた女に告白しようとして「君も、僕の気持ちには薄々気付いてると思うけど…」「えっ!坂下ちゃんってホモじゃなかったの?」と撃沈し、荒れる内藤剛志さん。
それ以外にも、いつも一言多い新人巡査の佐藤隆太さん。そのワイルドな彼女のベッキーさん。「よかったですね。木幡さんの奥さんブスで」と言われ万感の思いで頷く刑事の鶴見辰吾さん。などなど、すべてのキャストのみなさんが見事なハーモニーで「板子一枚下は地獄」の状況をコミカルにみせてくれます。
本作のホントの素晴らしさをお伝えするのは、私にはとても無理ですが、もし「人をおもいやる心」を持ち、「人間ってイイなぁ」とか「生きてるってイイなぁ」と思いたければ、あなたにとってこのドラマは奇跡のような作品になるかも知れません。