日本を代表するジャズ/フュージョンユニット、Fragileによる通算8作目、2005年の作品です。CDの帯には「VMEへの移籍第1弾!」という煽り文句があって、グループとして心機一転、新しい方向性を探り始めていることを示唆しています。
そんなわけで、大きな期待感をもってこの作品に臨みましたが、結論から言って、やはり「いつもの3人のサウンド」ということには変わりありません。矢堀氏のギターは相変わらずですし、それを支えるお家芸とも言える複雑な変拍子もいつもの感じ。楽曲としては、中近東風のテイストを大胆に取り入れるなどの新しい試みも見られますが、根底に流れるものはデビュー作から一貫しています。いわば「金太郎飴的な偉大なるマンネリズム」がユニットとしての持ち味だと個人的には思うのですが、ひとヒネリもふたヒネリも利かせようという試みは、逆にもうひとつの持ち味である「あくまでも明快な楽曲」という魅力を削いでしまっている感も受けます。策に溺れたとまでは言いませんが、ここはひとつ、原点に戻っていつもの感じでプレイしても、誰も文句を付けないと思うのです。例えば矢堀氏のソロアルバムを聴いても、新しい試みもすんなりと耳に入ってくるのですが、3人となると、それがアダになってしまうのは、グループとしての活動がどんなに困難なことかを表しているように思えます。