68年のデビュー作は、ミック・エイブラハムズとイアン・アンダーソンの2枚看板だった唯一のアルバム。つまり、ナイスのファーストに近い双頭バンドの記録であり、当時のロックに欠かせなかったギタリストとロック界では例外的なフルート奏者とがどう折り合いをつけるかを課題としたスタートだった。クリームもカヴァーしたCat's Squirrelではエイブラハムズが、ローランド・カークのSerenade to a Cuckooではアンダーソンが思う存分それぞれの個性を爆発させている。インストゥルメンタルにも相当の自信があったのが見て取れる。エイブラハムズは、ギターだけでなく、Move on Aloneでは作曲とヴォーカルも担当している。それも、フレンチ・ホルンを中心としたオーケストラをバックにした非ブルース色曲というのもおもしろい。しかし、やはり彼らのユニークな個性は、冒頭の<日曜日の印象>と先行シングルの<ジェフリーに捧げし歌>に顕著だ。フルートが誘う様々な垣根を越えたサウンドが彼らを独自の音世界へと誘っていくはずだからである。この傾向は、アルバム発表後にリリースしたLove StoryとA Christmas Songのシングルに一層明確に出ている。 それにしてもこのジャケット・フォト!―裏の自意識過剰のアンダーソンもイカシちゃいるが、森の中らしい書割をバックに十数匹の犬に囲まれジジイに扮したメンバーの写真には笑わかされる。当時のユース・カルチャーを揶揄しているのだろうか。あるいは、ザ・バンドへの共感の彼らなりの表現?この破天荒なジャケットも功を奏したのか―いや実際のところは、中ジャケにも写るライヴ・パフォーマンスが好評を博したのだろう―デビュー作としては上々の全英10位まで昇るヒット作となった。