このレビューはとりあえず、全くの感情論のみで書いてみました。
僕ははじめフィッシュマンズを聴いた時、素晴らしいと思う反面、
無意識に拒否反応を示していました。彼らの作る音楽は余りにも透き通って
いて、優しすぎるものだったので、日々を誤魔化しながら生きる自分には
それは深く突き刺さるものであったからです。
しばらく時を経てもう一度聴くと、本当に涙が出るくらい(実際少し泣いた)
世界観に溶け込むことができました。
彼らの音はとてもじゃないけれど音の作りだけを客観的に分析して論じる
ようなものではないです。中に入り込むか、拒絶かの二つしかない気がします。
歌詞の中でよくテーマにされる「見えない力」、この世界を一歩踏み越えた
所にある力を彼らの音楽は描いているように感じます。
その場所は夢の世界であり、感情のみで辿り着く世界であり、そして死の世界
だと僕は思います。これは決して佐藤さんの事があったからではなく、
歌詞の中で呼びかけられる「君」が、度々過去の存在、喪失した存在と
して描かれている事からそう感じたのです。
過ぎ去った物への深い愛、そして現在の場所から延長線を伸ばす未来への
眼差し。フィッシュマンズを聴いていると、21世紀のこの世界においてさえ、
どんな規則でも計り得ない魔法のようなものを感じ取れます。