解説によると、タイトルの『軋轢』は便宜上のもので、本当はフリクションによる『フリクション』でしかないということです。時間にして41分しかない作品なのですが、レンタルしてきてHDDに音源を入れた後でも、どうしてもCDをほしくなりました。この硬質で緊張に満ちたパンク・サウンドは、みなさんもご指摘なさっているように、NO NEW YORK、Plastic Boxなどとともに聴かれるべきなのでしょう。
アナログが発売された当時に買い求めた「軋轢」。レック、常松、チコヒゲ三人の追っかけだった自分にとって、まあ、こんなものか、程度のものでした。この三人以前のフリクションも、その後のメンバーチェンジしたフリクションにも興味の無い自分にとって、この作品に収められた彼らは別のバンドです。アマチュアが緊張しながら丁寧に録音するのと同じように、彼らの荒々しさ、スピード感が完全に殺されてます。僕の知っているフリクションとは別のバンドの作品としては、もちろん十分に名作です。正直かっこいい。でも、あの三人のほとんどのライブを見た自分にとってはあまり価値が無いのです。東京ロッカーズに収められた二曲も一発ライブ取りということでガチガチでした。「軋轢」発売時シングルででた「I Can Tell」のB面に収められた「ピストル」こそ彼らという感じです。
軋轢というアルバム。1979年。ヒリヒリとしたギター、No Waveシーンに近い音。或いは((ちょっと違うけど)PiLの重たいベースやデッドなドラム。かなりその頃のニューヨークにいたバンドの音とこう、リアルタイムに共鳴していたような雰囲気。というか、元Teenage Jesus And The Jerksのベースの人がいたりする訳で、no waveの流れはあるのかな。プロデュースしたのが坂本龍一というのもEnoのNo New Yorkをそれなりに意識してないといったら嘘だろうし。。メンバーはその後、フリージャズに向かったりもする。そういう素質を持ち合わせている事を感じさせる瞬間もある。シングルカットされたらしいI can tellという曲は抽象化されたメロディとタイトなリズム、金属的なカッティングのギター、性急でフリーキィな(でも短い)ギターsolo、どれもがカッコいい。