売る気があるとは思えないこのジャケット。
聞き手を選んでいるのか、良く見せたい心理がないのか、
どうやら後者のようです。倉橋ヨエコさんのCDを店頭で見ると
どれも背表紙にタイトルと名前がちゃんと日本文字ではっきりと
書いてあって、そんな単純なことからも「かっこつけること」
よりも、「聴いてもらいたい」純粋な気持ちの先行していることが
わかります。
そして、中身もホンモノですよ!
当たり前のことですが、作者の中にどうしようもなく湧き上がって
くる、苦しい・嬉しい・醜い・美しい心の噴出した作品に触れた
ときに聞き手は共鳴し、救われ、呪われ、癒されるものです。
そんな当たり前がなおざりにされ、虚飾に満ちたつくりもの音楽が
幅を利かせる日本社会の中で、芸術を純粋培養したかのような
こんなアーティストが、このアルバムで世に出たことを多くの人が
知らずに、埋もれさせてしまったら、後世の恥になります。
みんな、倉橋ヨエコを聞きましょう!
2nd『思う壺』3rd『婦人用』までは、個人的な「つぶやき」色が
強いです。でも、このアルバムも『感謝的生活』『聴こえたから』など
人間や社会の単純素朴な本質に対して、自分の守備範囲を絶対に
超えずに軽快に歌い上げているので、生活の中のいろいろな場面で
ついつい口ずさんでしまいます。