台湾の映画が好きでいろいろ探す中で出会った一作。当たりでした。
女友達リンの片思いを成就させるため、彼女が思いを寄せる男の子との橋渡し役になった主人公の少女モン。ところが、橋渡し役の彼女が、逆にその相手のチャンという男の子の関心を引き寄せてしまう。そして三角関係の行方は・・・。という感じのストーリー。
ハラハラドキドキという起伏に富んだ展開ではないのに、なぜか登場人物の二人の気持ちの動きに引き込まれていく。台湾の夏の、素朴な風景の中で描かれる恋物語。夏の夜の街に並ぶ屋台や、夜風に吹かれる南国の植物、そんな映像が、なかなかいいのです。
そして終わったあと、じんわりと伝わってくる余韻。観終わったあとで、ちょっと切なくなるのは、映画の内容のせいなのか、それとも映画を通して自分の中の遠くて淡い記憶が揺り動かされたからか。見終わって数日が過ぎたのに、映画の中のいくつもの場面にもどってみたくなるのです。そこに、自分自身がまだ少年だった遠い夏、好きになった人にどう気持ちを伝えていいかわからないまま時間が過ぎていく夏の日の気持ちが、まるでスナップショットのように鮮明に保存されていて、この映画を見るたびにその気持ちに戻れるような気がするのです。