バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータから5曲と無伴奏チェロ組曲から1曲を、レオンハルトがチェンバロ用に編曲して演奏した作品。バッハの無伴奏ヴァイオリンやチェロの曲は単旋律楽器に多声を要求し、演奏者はいわば時分割多重方式で各声部の音を奏でる訳だが、チェンバロは容易に多声に対応できる代わりに音が持続しない。そこでレオンハルトが音符を加える等してチェンバロ用に「トランスクリプト」した訳である。
バッハ自身様々な曲でトランスクリプションをしており、この試みは悪くない。バッハの無伴奏ヴァイオリンとチェロの名曲の多声に新たな光を当てる冒険で、見事に成功している。レオンハルト自身にもこれら無伴奏曲への強い愛と関心があったのだろう。
このように、本作はレオンハルトの斬新な発想とチェンバロの典雅な調に満足できる作品である。無伴奏曲のヴァイオリンまたはチェロによる演奏に親しんでから、本作をじっくり味わうのがお勧めだ。