初めて試聴した時は鳥肌が立ってしまった。ここ10数年は全盛期と比べれば粗が見え、低迷期と呼ばれてもおかしくなかったかもしれない。だから、なおさら影響力は絶大でも音楽活動として事実上第一線から退いていたこともあり、そこまで期待はしていなかったのだ。
しかし、封を開けてみれば再び彼が自身でプロデュースをこなし、パーカッションとベースも本人によるものだ。HIGHER GROUNDの頃のように地を這うようなシンセベースと重厚なドラムプログラミングが跳ね、メロディラインも全盛期の頃に戻った感がある。
歌詞も社会的メッセージが強く、フックでは何度も何度も「何を騒いでいる」と繰り返す。
そこにPRINCEのシャープだが洗練されたギター裁きが絡み、アン・ヴォーグのコーラスは主張しない状態からだんだんと身を乗り出し、スティービー・ワンダーと掛け合うように後半を盛り上げていく。
カップリングはBAD BOYの腹心マリオ・ワイナンスがリミックスしたアンダーグラウンド感の漂う、攻撃的なオリジナルとはガラリと雰囲気が変わる名リミックス。傘でアスファルトを叩いたようなドラムがクラブっぽさを出し、そこに余り主張し過ぎないクールなQ-TIPのラップが絡みスティービー・ワンダーの歌声を華やかに押し出してくれる。
陰陽の関係に近いような二つの名作を堪能しいてほしい。