すばらしいシンガーだと思うし、ジャズに限らずクラブDJをプロデューサーに迎えたりというレンジの広さも聴いていて楽しい。
今回は初の全編ライブ録音でしかも、バックはアコースティックなピアノトリオで、クラバーDJなんぞに頼らなくても歌だけで十分という意気込みも感じられる。さすが日本人ボーカル発のVerve契約アーティストという実力通り、アップテンポからバラード、テンションのきわどいところをつなぐようなフェイクも、一筋縄ではいかないボーカリストであることはよくわかる。中でも白眉なのはNight and Dayで、スピード感溢れるアレンジも聴きどころ。
ただピアノが今ひとつ無機質なプレイに徹している(結構メカニカルなパターンが何度も何度も出てくる)のが意図的なのかはわからないが、メロディアスという表現があまり浮かばないバックのトリオが少々物足りないか。それから最後の1曲だけなぜかわざとアナログのスクラッチ音を残したような音になっているが、そんなことしなくてもいいのになぁと少々残念。