ムーディーブルースの現キーボード奏者、ポール・ブリス率いるブリス・バンドの1作目。プロデュースは、スティーリーダン、ドゥービーのジェフ・バクスターという曰くつきの作品。
一応、ジャンルは、AORか、英国ニッチ・ポップ、ということになると思いますが、音のほうは、このバンドをご存知なら当然ご存知だと思いますが、モロにスティーリー・ダンの影響を受けております。
いきなり、1曲目の RIO から リキの電話番号の歌い出しが頭に浮かびます。やはり、バクスターや、コーラスで参加(3,7)しているマイケル・マクドナルドに認められただけあって、「プレッツェル・ロジック」や「うそつきケイティ」あたりの音に一番近い(前期・後期を連想させるような曲もありますが)ように感じます。「ガウチョ」みたいな研ぎ澄まされた超合金ユニットの音ではなく、70年代中期までのスティーリー・ダンのようなスイートな音がして個人的にはとても気に入っています。
メロディー、アレンジは言うに及ばず、声質は違えども、ポール・ブリスの口の中でこねくり回すような歌いまわしは、モロにドナルド・フェイゲンの影響を感じます。歌の感じも裏ジャケの笑顔の写真を見てもフェイゲンを良い人にしたというイメージかと...。
ギターはあまりに達者なのでバクスターかと思いましたが、バクスターが参加しているのは、アコギとペダル・スチールのみということで、後は全部、メンバーのフィル・パーマーが弾いているのでしょう。それにしても上手いなぁ。スティーリー・ダンの多彩なキーボードパートの一部をギターが担っているような印象です。
リズム隊の方は、割と白人バンドらしい演奏だと思います。初期の頃からベース、ドラムにプロフェッショナルなセッションマンを起用していたスティーリー・ダンと比較すると、このバンドがもっとも異なるところはリズム隊ではないかと思います。ちなみに私は、こういうバンドっぽいリズム隊は好きです。バンドカラーを作るのはやはり屋台骨のリズム隊だと思いますし、あまりバラエティーに富んでいないところが、このアルバム全体の統一感を生んでいるように思います。
なかなかCDも手に入りにくくなって来ているようですが、雰囲気だけではなく曲の出来が素晴らしいので手に入れる価値はあると思います。