マイルスとトレーンには因縁やら確執が纏わり付いている様ですね。そんな二人の最後の最後のセッションが本作品です。マイルスのこうしたジャズのスタイルとしては間もなく終わりを迎える時期で有り、トレーンにとっては「やっとマイルスと別れられる最後の共演」で有ります。死を迎える迄の新境地前夜の記録と云えるものですね。コルトレーン・ファン必聴の一枚です!
マイルスとトレーンには "ホンマかいな? " のエピソードが幾つも有りますが、マイルスにとっては本当に別れたく無い存在のトレーンだったのでしょうね。だってトレーン、どう聴いてもアルバムコンセプトに合わないですよね、凄すぎて。前年の春・秋の欧州楽旅のスティットとトレーンを聴けば瞭然ですが、もう既にマイルスの楽想とトレーンのそれには大きな違いがあったのが良く解ります。
このアルバムのコンセプトには、マイルスがスティットとの共演にリラクゼーションを示した様に、モブレーとの演奏がベストと云えるでしょう。"泣きのマイルス未練の秀作"・・・でしょうか?
データ『Someday My Prince Will Come』/
1961.3.7 Columbia 30th Street Studio, NYC/Miles Davis (tp); Hank Mobley (ts); Wynton Kelly (pf); Paul Chambers (b); Jimmy Cobb (ds);
cd, #4/Drad-Dog (take 6) (M. Davis) 各テイク数はオリジナル最終テイクと考える
cd, #3/Pfrancing-as No Blues (take 4) (M. Davis)
1961.3.20 Columbia 30th Street Studio, NYC/ Add John Coltrane (ts);
cd, #1/Someday My Prince Will Come (take 15) (F.E. Churchill-L. Morey) add John Coltrane
因に、ボーナストラックとしてリリースされたモブレーのみのヴァージョンは take14 のもの。
cd, #2/Old Folks (take 6) (D.L. Hill-W. Robison)
1961.3.20 Columbia 30th Street Studio, NYC/Add John Coltrane (ts);
cd, #5/Teo-as Neo (take 9) (M. Davis) Coltrane replaces Mobley
cd, #/I Thought About You (take 4) (J. Mercer-J. Van Heusen) Coltrane out
因に、「Circle In The Round」としてリリースされた中の "Blues No.2" は不完全版で (6:51)、本盤のボーナストラックとして出たものは (7:02) の完全版。ドラムスは Philly Joe Jones に替わっています
先ずトレーンの参加に関して・・・『モード手法”で録音を始めたところモブレイがまったく理解できておらず、10回連続失敗。業を煮やしたマイルスが急遽コルトレーンを呼び、吹かせたところ1発OKだったという逸話も。』と云う話しが巷間伝わっている様です。ホントでしょうか?一次資料としての出典を識らないので眉唾な気がします。(曲 Someday My...のトレーン参加はオリジナル最終テイクが15だが、モブレーのみのテイクで最高は8テイクにすぎない。トレーンのみのもう1曲 "Teo" はオリジナルテイクは 9である)
この日トレーンは自分の公演を終え「楽器をケースにしまわないでそのまま駆けつけた/"マイルスを聴け!" ver8, p-188」らしく、「モブレー1人では心配だったから、2日間だけ呼び戻された/左記同」とされています。文面から急にマイルスから呼ばれた様な印象誤解を生みかねませんが、そんなことはマズマズありえないでしょう。最後の最後のマイルスとのセッションとしてトレーンは尋常ならざる心持ちで臨んだと推測します。演奏のクオリティーが物語っています。マイルスにしても、これが最後と云う特別な思いがあったに違いありません。モブレーのフォローやアルバムの為とは思えません。マイルス結構メメシイところ有ります。
モブレーは前年のスティット同様一時的な加入だったのかもしれませんが、モード手法が全く理解出来ないとしたら今後の宣伝材料として最重要な「カタログ」である公式録音に参加させる訳が無いでしょう。加入期間が短いとは云え '61 4月のブラックホーク、5月のカーネギーホールと素晴らしい作品に名を留めました。
マイルスとトレーンには因縁やら確執が纏わり付いている様ですね。そんな二人の最後の最後のセッションが本作品です。マイルスのこうしたジャズのスタイルとしては間もなく終わりを迎える時期で有り、トレーンにとっては「やっとマイルスと別れられる最後の共演」で有ります。死を迎える迄の新境地前夜の記録と云えるものですね。微妙な演奏・心境という意味でもコルトレーン・ファン必聴の一枚です!
次はこれでやっと解放されたトレーンについて想像してみます/
『真の "ジャイアントステップ" 直前のトレーンが居る!』
世評ではトレーンの飛躍をそのタイトルに釣られてか「Giant Steps」をターニングポイントとしています。かねがね「ホントにそうかなぁ?」と思いつつも真剣には検証せずに流れて来ました。最近マイルスの整理も一段落という感じでトレーンを改めて聴き直し、買い増し等の最中であります。そんな中での改めての疑問です。
何時の時代のトレーンも大好きですが、晩年のトレーンを特徴付ける演奏のステップが何処に有ったかといえば、1,ホップ [The Avant-Garde/'60.6.28, 7.8] 2,ステップ [本作品/'61.3.20, 21] 3, ジャンプ [Africa/Brass/'61.5.23, 6.7] 『Africa/Brass』("Ole" も同質) これこそがトレーンを "John Coltrane" とした嚆矢の作品と聴きます。
Atlantic は助走としてトレーンを支え、Impulse はトレーンの滑走路となったのです。
『Bags & Trane〜Giant Steps〜Coltrane Jazz〜'60 Euro Tour のボス抜き公演〜The Avant-Garde〜My Favorite Things〜Coltrane Plays The Blues〜Coltrane's Sound〜Someday My Prince Will Come』そして『Africa/Brass』に辿り着いて感じた現在の感想です。
トレーン・ファンは当然この作品 (Someday My Prince Will Come) お聴きと存じますが、これからコルトレーンを聴かれる方々本作品をお忘れなく。