1979年、初期ワイヤーのラストを飾る3rdアルバム。
オリジナルの英国アナログ盤を、確か高田馬場OPUS-ONEにて購入。
当時、よくあった商法で、クラッシュやスウェル・マップスもやっていたが、アルバムの中に7インチ・シングルがオマケで入っていて、スゲー得したような気分になった憶い出がある。
手許のCD盤は、1995年に東芝から出た廉価盤。
オリジナル13曲に、ボーナス・トラック11曲追加して計24曲収録。
昔は、不気味で美しい傑作2ndばかり聴いていたが、本作を改めて聴き直すと、匹敵するようなデキではないか。
基本的には前作の延長上のバンド・サウンドではあるのだが、3枚目ともなれば、洗練化も進み、美メロも生まれれば、ポップ・センスも身につき始め、楽器演奏もいくらかは上達し、表現範囲が拡大する。
通常、上手くなったり、ポップになると、大方つまらないものになりがちだが、ワイヤーはキャヴァレー・ヴォルテール、スロッビング・グリッスル等、英国インダストリアル勢との共振も窺え、深く、暗く、変化に富む内容。
3曲目「15日 (ジャコバンの暴動)」は、勿論、フランスのジャコバン党のことだろうが、暗喩を含む短い歌詞が意味深で、悲痛さが漂うメロディが美しい。
4曲目の「アザー・ウィンドウ」は、シュールなポエトリー・リーディングで始まる2分余りのナンバーだが、不安を煽るバックとマッチングし、静謐でドラマティックな6「ア・タッチング・ディスプレイ」から比較的キャッチーな7「オン・リターニング」への流れに豊かな物語性を感じる。
追加トラックでは、20~24のデモ集より、実験性が高い14~19の方が個人的に興味深かった。
各媒体から初期ピンク・フロイドとの類似を指摘され、辟易していた彼等だが、『原子心母』B面「アランのサイケデリック・ブレックファスト」を連想してしまった、ははは・・・