仕様も生産国もメディアも異なる商品頁のレビューが共有されているがASIN:B000A0K5M8、JAN:4523215015233(2005年紀伊國屋邦盤DVD)のレビュー。ご注意ください。
原題:Deux Hommes dans Manhattan, 1959年、仏、モノクロ、84分、ジャン=ピエール・メルヴィル監督・主演。ピエール・グラッセ出演。オリジナルデータ、簡単な商品仕様は文末にあります。
50年代、ニューヨーク。フランスの国連代表が重要議決に連絡なく不参加。新聞社は1人の記者モローへ大使捜索を命じる。彼が相棒に選んだのは女好きで酒好きの友人のカメラマン、デルマス。二人は夜から朝へ掛けて大都会を奔走する・・。と書けばヒッチコック作品のような、あるいは謀略政治サスペンスのようだ。しかし本作はまったくそれらとは異なる空気をまとい、映画は微妙に横へ反れている。伏線、オチ、必然性といった不純物から軽やかに逃れるメルヴィルの語り口。「コツ」と「ツボ」だけを押さえた「コツツボ」作品を垂れ流している現在の聖林大手スタジオ作品が泣けてくる(進んで、コツもツボも押さえ切れていないのだが)。
疾走した大使の情婦たちを訪ねて深夜のニューヨークを駆け巡る一夜。謎解きや真相解明もそこそこに、劇的な物語を期待する観客の予想をことごとくするりと裏切る。映画のジャンル分けにはあまり意味はないが、わかりやすくいうとスリラーでもサスペンスでもない。夜のニューヨークをゲリラ的に撮影したフレンチ・ハードボイルドか。40~50年代米ノワール(ホークス、フラー、レイ、ラング、ダッシン、ヒューストン監督ら)への返礼とも挨拶ともとれる。解説書によれば、撮影にあたりメルヴィルと はヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を何回も観たらしい)。まさにノワールの映画といってもいいが、非情な運命や噴出するヴァイオレンス、命のやりとりはない。ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」などのような虚無・消失感、ヒリヒリする焦燥もあえて薄い。
主人公2人の確執や意地が描かれ、仏レジスタンスも重要なモチーフになっている点は見逃せないが、この描写や2人の内面に重きを置かない。登場人物の背景の描き方は最小限に留められている。饒舌な映画はときとしてうるさいものだ。抑えられた人物造形は(商品の解説書にあるとおり)それを含めた後のヌーベルヴァーグ(例えばトリュフォーの「ピアニストを撃て」)やカサベテス作品の匂いがする。来た、見た、撮ったというような力みなさと、無作為という作為。
モローを演じるのは監督でもあるメルヴィル本人。デルマスにピエール・グラッセ。どちらも疲れたような、過剰でない気怠さをまとっていて、特にグラッセのキャラは妙な存在感がある。解説書によれば「ホモ・ソーシャル」と呼ばれているらしい関係の萌芽があるということだ。例えば「さらば友よ」「仁義」(そしてダッシンの「男の争い」や小説「長いお別れ」等も)など。ホモセクシャルとは異なる、友情だけでは片づけられない固い結びつき・強い絆。
50年代、米以上にジャズを愛し、ジャズマンが活路を見出した仏からのこれまた返礼・オマージュともいえる、マルシャル・ソラルのジャズがニューヨークの夜景にバシバシ流れて痺れる。音楽と並んで本作の一番の魅力といってよいモノクロ撮影はマイク・シュレイヤー(メルヴィルが映らないシーンはメルヴィル本人がカメラを廻している)。室内シーンはパリでのセット撮影で(これが個人的には惜しい)、「いぬ」ロメールの「獅子座」にも関与したニコラ・エイエが担当。屋外でのコントラストの強いローキーの撮影。この時代のジャズレーベル「プレスティッジ」「リヴァーサイド」の(動く)アルバムジャケのよう(例えば「After Hours」)。
仏代表、その娘、情婦たちの思いに触れながら、それらを呑みこんで何事もない顔の乾いた大都市ニューヨークの夜そのもの。街灯、ヘッドライト、ネオン。そこを離れらない人々。そこを泳ぐストレンジャー2人。これこそが彼の撮りたかったことかも知れない。
★オリジナルデータ:
Deux Hommes dans Manhattan、(英題Two Men in Manhattan1959)、FR, オリジナル・アスペクト比(=劇場上映画面比)1.37:1。59年配給Columbia Films、90年リバイバルGaumont。84min. B&W、Mono、NegativeFormat &Printed Film Format(35mm)
★このレビューのコードのDVDについて(ASIN:B000A0K5M8、JAN:4523215015233(2005年紀伊國屋邦盤DVD):
既存フッテージ部分(景色等)やゲリラ撮影と思われるシーンはやや粗く傷がちらほら。全体では傷・ノイズ、滲み・甘味等少なく、相対的には製作年代を考えれば秀。諧調は良く出ていると思う。
リージョン2対応、NTSC プレス盤
映像仕様は4:3、画面アスペクト比:スタンダード(オリジナル・アスペクト(=劇場公開比)どおり)
片面 1層、84min、B&W. MPEG2
音声:仏語(モノラル、Dolby Digital)
字幕:日本語、On ・Off 可
メインメニュー、チャプターメニューあり、ピクチャーディスク
〇映像特典:仏予告編(4:3、モノクロ、約3分半、字幕なし。画質は本編に劣る)
〇音声特典:― 〇付属物:20ページリーフレット。解説や写真(モノクロ)が充実。
発売:イマジカ。販売:紀伊國屋書店、2005年 KKDS249
★本サイトで買える他の商品:
2010年に紀伊國屋から廉価盤DVD再発。2015年にIVC社から発売(DVD, 初BD。初HDマスター化、と本サイト頁に書かれている。特段のレストア情報はない)Import BDは略。
マンハッタンの二人の男 [DVD]
フォーマット | ドルビー, ブラック&ホワイト |
コントリビュータ | ジャン=ピエール・メルヴィル, ピエール・グラッセ, アレクサンドラ・スチュワルト |
言語 | フランス語 |
稼働時間 | 1 時間 24 分 |
【まとめ買いフェア開催中】よりどり2点以上で5%OFF
アウトドア用品、ファッション、食品・飲料、母の日ギフト、父の日ギフト関連商品など、10万点を超える対象アイテムからよりどり2点以上で5%OFF。 セール会場はこちら
商品の説明
商品紹介
IMAGICA+紀伊國屋書店の新シリーズ
フィルム・ノワール セレクション 第1回リリース
犯罪を匿う闇の世界-殺人、争い、そして運命の女。
スタイリッシュでダーク、魅惑的な映画の数々。
純粋なフィルム・ノワールから様々な展開までを促える、ファン待望のライン!
【特典】
ポスター型ライナーノーツ封入、ピクチャーディスク仕様
【スタッフ・キャスト】
監督・脚本・撮影:ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影:ニコラ・エイエ
音楽:クリスチャン・シュヴァリエ、マルシャル・ソラル
出演:ピエール・グラッセ、ジャン=ピエール・メルヴィル、C・コード、アレクサンドラ・スチュワルト
レビュー
監督・脚本・撮影・出演: ジャン=ピエール・メルヴィル 撮影: ニコラ・エイエ 音楽: クリスチャン・シュヴァリエ/マルシャル・ソラル 出演: ピエール・グラッセ/C.コード/アレクサンドラ・スチュワルト
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- アスペクト比 : 1.33:1
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 言語 : フランス語
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4523215015233
- 監督 : ジャン=ピエール・メルヴィル
- メディア形式 : ドルビー, ブラック&ホワイト
- 時間 : 1 時間 24 分
- 発売日 : 2005/9/30
- 出演 : ピエール・グラッセ, ジャン=ピエール・メルヴィル, アレクサンドラ・スチュワルト
- 字幕: : 日本語
- 言語 : フランス語 (Mono)
- 販売元 : 紀伊國屋書店
- ASIN : B000A0K5M8
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 245,349位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 9,124位外国のミステリー・サスペンス映画
- - 24,733位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
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50年代のN.Y. がモノクロで閉じ込められている、メルヴィル監督・主演作。2005年邦盤DVDレビュー
仕様も生産国もメディアも異なる商品頁のレビューが共有されているがASIN:B000A0K5M8、JAN:4523215015233(2005年紀伊國屋邦盤DVD)のレビュー。ご注意ください。原題:Deux Hommes dans Manhattan, 1959年、仏、モノクロ、84分、ジャン=ピエール・メルヴィル監督・主演。ピエール・グラッセ出演。オリジナルデータ、簡単な商品仕様は文末にあります。50年代、ニューヨーク。フランスの国連代表が重要議決に連絡なく不参加。新聞社は1人の記者モローへ大使捜索を命じる。彼が相棒に選んだのは女好きで酒好きの友人のカメラマン、デルマス。二人は夜から朝へ掛けて大都会を奔走する・・。と書けばヒッチコック作品のような、あるいは謀略政治サスペンスのようだ。しかし本作はまったくそれらとは異なる空気をまとい、映画は微妙に横へ反れている。伏線、オチ、必然性といった不純物から軽やかに逃れるメルヴィルの語り口。「コツ」と「ツボ」だけを押さえた「コツツボ」作品を垂れ流している現在の聖林大手スタジオ作品が泣けてくる(進んで、コツもツボも押さえ切れていないのだが)。疾走した大使の情婦たちを訪ねて深夜のニューヨークを駆け巡る一夜。謎解きや真相解明もそこそこに、劇的な物語を期待する観客の予想をことごとくするりと裏切る。映画のジャンル分けにはあまり意味はないが、わかりやすくいうとスリラーでもサスペンスでもない。夜のニューヨークをゲリラ的に撮影したフレンチ・ハードボイルドか。40~50年代米ノワール(ホークス、フラー、レイ、ラング、ダッシン、ヒューストン監督ら)への返礼とも挨拶ともとれる。解説書によれば、撮影にあたりメルヴィルと はヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を何回も観たらしい)。まさにノワールの映画といってもいいが、非情な運命や噴出するヴァイオレンス、命のやりとりはない。ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」などのような虚無・消失感、ヒリヒリする焦燥もあえて薄い。主人公2人の確執や意地が描かれ、仏レジスタンスも重要なモチーフになっている点は見逃せないが、この描写や2人の内面に重きを置かない。登場人物の背景の描き方は最小限に留められている。饒舌な映画はときとしてうるさいものだ。抑えられた人物造形は(商品の解説書にあるとおり)それを含めた後のヌーベルヴァーグ(例えばトリュフォーの「ピアニストを撃て」)やカサベテス作品の匂いがする。来た、見た、撮ったというような力みなさと、無作為という作為。モローを演じるのは監督でもあるメルヴィル本人。デルマスにピエール・グラッセ。どちらも疲れたような、過剰でない気怠さをまとっていて、特にグラッセのキャラは妙な存在感がある。解説書によれば「ホモ・ソーシャル」と呼ばれているらしい関係の萌芽があるということだ。例えば「さらば友よ」「仁義」(そしてダッシンの「男の争い」や小説「長いお別れ」等も)など。ホモセクシャルとは異なる、友情だけでは片づけられない固い結びつき・強い絆。50年代、米以上にジャズを愛し、ジャズマンが活路を見出した仏からのこれまた返礼・オマージュともいえる、マルシャル・ソラルのジャズがニューヨークの夜景にバシバシ流れて痺れる。音楽と並んで本作の一番の魅力といってよいモノクロ撮影はマイク・シュレイヤー(メルヴィルが映らないシーンはメルヴィル本人がカメラを廻している)。室内シーンはパリでのセット撮影で(これが個人的には惜しい)、「いぬ」ロメールの「獅子座」にも関与したニコラ・エイエが担当。屋外でのコントラストの強いローキーの撮影。この時代のジャズレーベル「プレスティッジ」「リヴァーサイド」の(動く)アルバムジャケのよう(例えば「After Hours」)。仏代表、その娘、情婦たちの思いに触れながら、それらを呑みこんで何事もない顔の乾いた大都市ニューヨークの夜そのもの。街灯、ヘッドライト、ネオン。そこを離れらない人々。そこを泳ぐストレンジャー2人。これこそが彼の撮りたかったことかも知れない。★オリジナルデータ:Deux Hommes dans Manhattan、(英題Two Men in Manhattan1959)、FR, オリジナル・アスペクト比(=劇場上映画面比)1.37:1。59年配給Columbia Films、90年リバイバルGaumont。84min. B&W、Mono、NegativeFormat &Printed Film Format(35mm)★このレビューのコードのDVDについて(ASIN:B000A0K5M8、JAN:4523215015233(2005年紀伊國屋邦盤DVD):既存フッテージ部分(景色等)やゲリラ撮影と思われるシーンはやや粗く傷がちらほら。全体では傷・ノイズ、滲み・甘味等少なく、相対的には製作年代を考えれば秀。諧調は良く出ていると思う。リージョン2対応、NTSC プレス盤映像仕様は4:3、画面アスペクト比:スタンダード(オリジナル・アスペクト(=劇場公開比)どおり)片面 1層、84min、B&W. MPEG2音声:仏語(モノラル、Dolby Digital)字幕:日本語、On ・Off 可メインメニュー、チャプターメニューあり、ピクチャーディスク〇映像特典:仏予告編(4:3、モノクロ、約3分半、字幕なし。画質は本編に劣る)〇音声特典:― 〇付属物:20ページリーフレット。解説や写真(モノクロ)が充実。発売:イマジカ。販売:紀伊國屋書店、2005年 KKDS249★本サイトで買える他の商品:2010年に紀伊國屋から廉価盤DVD再発。2015年にIVC社から発売(DVD, 初BD。初HDマスター化、と本サイト頁に書かれている。特段のレストア情報はない)Import BDは略。
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原題:Deux Hommes dans Manhattan, 1959年、仏、モノクロ、84分、ジャン=ピエール・メルヴィル監督・主演。ピエール・グラッセ出演。オリジナルデータ、簡単な商品仕様は文末にあります。
50年代、ニューヨーク。フランスの国連代表が重要議決に連絡なく不参加。新聞社は1人の記者モローへ大使捜索を命じる。彼が相棒に選んだのは女好きで酒好きの友人のカメラマン、デルマス。二人は夜から朝へ掛けて大都会を奔走する・・。と書けばヒッチコック作品のような、あるいは謀略政治サスペンスのようだ。しかし本作はまったくそれらとは異なる空気をまとい、映画は微妙に横へ反れている。伏線、オチ、必然性といった不純物から軽やかに逃れるメルヴィルの語り口。「コツ」と「ツボ」だけを押さえた「コツツボ」作品を垂れ流している現在の聖林大手スタジオ作品が泣けてくる(進んで、コツもツボも押さえ切れていないのだが)。
疾走した大使の情婦たちを訪ねて深夜のニューヨークを駆け巡る一夜。謎解きや真相解明もそこそこに、劇的な物語を期待する観客の予想をことごとくするりと裏切る。映画のジャンル分けにはあまり意味はないが、わかりやすくいうとスリラーでもサスペンスでもない。夜のニューヨークをゲリラ的に撮影したフレンチ・ハードボイルドか。40~50年代米ノワール(ホークス、フラー、レイ、ラング、ダッシン、ヒューストン監督ら)への返礼とも挨拶ともとれる。解説書によれば、撮影にあたりメルヴィルと はヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を何回も観たらしい)。まさにノワールの映画といってもいいが、非情な運命や噴出するヴァイオレンス、命のやりとりはない。ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」などのような虚無・消失感、ヒリヒリする焦燥もあえて薄い。
主人公2人の確執や意地が描かれ、仏レジスタンスも重要なモチーフになっている点は見逃せないが、この描写や2人の内面に重きを置かない。登場人物の背景の描き方は最小限に留められている。饒舌な映画はときとしてうるさいものだ。抑えられた人物造形は(商品の解説書にあるとおり)それを含めた後のヌーベルヴァーグ(例えばトリュフォーの「ピアニストを撃て」)やカサベテス作品の匂いがする。来た、見た、撮ったというような力みなさと、無作為という作為。
モローを演じるのは監督でもあるメルヴィル本人。デルマスにピエール・グラッセ。どちらも疲れたような、過剰でない気怠さをまとっていて、特にグラッセのキャラは妙な存在感がある。解説書によれば「ホモ・ソーシャル」と呼ばれているらしい関係の萌芽があるということだ。例えば「さらば友よ」「仁義」(そしてダッシンの「男の争い」や小説「長いお別れ」等も)など。ホモセクシャルとは異なる、友情だけでは片づけられない固い結びつき・強い絆。
50年代、米以上にジャズを愛し、ジャズマンが活路を見出した仏からのこれまた返礼・オマージュともいえる、マルシャル・ソラルのジャズがニューヨークの夜景にバシバシ流れて痺れる。音楽と並んで本作の一番の魅力といってよいモノクロ撮影はマイク・シュレイヤー(メルヴィルが映らないシーンはメルヴィル本人がカメラを廻している)。室内シーンはパリでのセット撮影で(これが個人的には惜しい)、「いぬ」ロメールの「獅子座」にも関与したニコラ・エイエが担当。屋外でのコントラストの強いローキーの撮影。この時代のジャズレーベル「プレスティッジ」「リヴァーサイド」の(動く)アルバムジャケのよう(例えば「After Hours」)。
仏代表、その娘、情婦たちの思いに触れながら、それらを呑みこんで何事もない顔の乾いた大都市ニューヨークの夜そのもの。街灯、ヘッドライト、ネオン。そこを離れらない人々。そこを泳ぐストレンジャー2人。これこそが彼の撮りたかったことかも知れない。
★オリジナルデータ:
Deux Hommes dans Manhattan、(英題Two Men in Manhattan1959)、FR, オリジナル・アスペクト比(=劇場上映画面比)1.37:1。59年配給Columbia Films、90年リバイバルGaumont。84min. B&W、Mono、NegativeFormat &Printed Film Format(35mm)
★このレビューのコードのDVDについて(ASIN:B000A0K5M8、JAN:4523215015233(2005年紀伊國屋邦盤DVD):
既存フッテージ部分(景色等)やゲリラ撮影と思われるシーンはやや粗く傷がちらほら。全体では傷・ノイズ、滲み・甘味等少なく、相対的には製作年代を考えれば秀。諧調は良く出ていると思う。
リージョン2対応、NTSC プレス盤
映像仕様は4:3、画面アスペクト比:スタンダード(オリジナル・アスペクト(=劇場公開比)どおり)
片面 1層、84min、B&W. MPEG2
音声:仏語(モノラル、Dolby Digital)
字幕:日本語、On ・Off 可
メインメニュー、チャプターメニューあり、ピクチャーディスク
〇映像特典:仏予告編(4:3、モノクロ、約3分半、字幕なし。画質は本編に劣る)
〇音声特典:― 〇付属物:20ページリーフレット。解説や写真(モノクロ)が充実。
発売:イマジカ。販売:紀伊國屋書店、2005年 KKDS249
★本サイトで買える他の商品:
2010年に紀伊國屋から廉価盤DVD再発。2015年にIVC社から発売(DVD, 初BD。初HDマスター化、と本サイト頁に書かれている。特段のレストア情報はない)Import BDは略。
原題:Deux Hommes dans Manhattan, 1959年、仏、モノクロ、84分、ジャン=ピエール・メルヴィル監督・主演。ピエール・グラッセ出演。オリジナルデータ、簡単な商品仕様は文末にあります。
50年代、ニューヨーク。フランスの国連代表が重要議決に連絡なく不参加。新聞社は1人の記者モローへ大使捜索を命じる。彼が相棒に選んだのは女好きで酒好きの友人のカメラマン、デルマス。二人は夜から朝へ掛けて大都会を奔走する・・。と書けばヒッチコック作品のような、あるいは謀略政治サスペンスのようだ。しかし本作はまったくそれらとは異なる空気をまとい、映画は微妙に横へ反れている。伏線、オチ、必然性といった不純物から軽やかに逃れるメルヴィルの語り口。「コツ」と「ツボ」だけを押さえた「コツツボ」作品を垂れ流している現在の聖林大手スタジオ作品が泣けてくる(進んで、コツもツボも押さえ切れていないのだが)。
疾走した大使の情婦たちを訪ねて深夜のニューヨークを駆け巡る一夜。謎解きや真相解明もそこそこに、劇的な物語を期待する観客の予想をことごとくするりと裏切る。映画のジャンル分けにはあまり意味はないが、わかりやすくいうとスリラーでもサスペンスでもない。夜のニューヨークをゲリラ的に撮影したフレンチ・ハードボイルドか。40~50年代米ノワール(ホークス、フラー、レイ、ラング、ダッシン、ヒューストン監督ら)への返礼とも挨拶ともとれる。解説書によれば、撮影にあたりメルヴィルと はヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を何回も観たらしい)。まさにノワールの映画といってもいいが、非情な運命や噴出するヴァイオレンス、命のやりとりはない。ルイ・マルの「死刑台のエレベーター」などのような虚無・消失感、ヒリヒリする焦燥もあえて薄い。
主人公2人の確執や意地が描かれ、仏レジスタンスも重要なモチーフになっている点は見逃せないが、この描写や2人の内面に重きを置かない。登場人物の背景の描き方は最小限に留められている。饒舌な映画はときとしてうるさいものだ。抑えられた人物造形は(商品の解説書にあるとおり)それを含めた後のヌーベルヴァーグ(例えばトリュフォーの「ピアニストを撃て」)やカサベテス作品の匂いがする。来た、見た、撮ったというような力みなさと、無作為という作為。
モローを演じるのは監督でもあるメルヴィル本人。デルマスにピエール・グラッセ。どちらも疲れたような、過剰でない気怠さをまとっていて、特にグラッセのキャラは妙な存在感がある。解説書によれば「ホモ・ソーシャル」と呼ばれているらしい関係の萌芽があるということだ。例えば「さらば友よ」「仁義」(そしてダッシンの「男の争い」や小説「長いお別れ」等も)など。ホモセクシャルとは異なる、友情だけでは片づけられない固い結びつき・強い絆。
50年代、米以上にジャズを愛し、ジャズマンが活路を見出した仏からのこれまた返礼・オマージュともいえる、マルシャル・ソラルのジャズがニューヨークの夜景にバシバシ流れて痺れる。音楽と並んで本作の一番の魅力といってよいモノクロ撮影はマイク・シュレイヤー(メルヴィルが映らないシーンはメルヴィル本人がカメラを廻している)。室内シーンはパリでのセット撮影で(これが個人的には惜しい)、「いぬ」ロメールの「獅子座」にも関与したニコラ・エイエが担当。屋外でのコントラストの強いローキーの撮影。この時代のジャズレーベル「プレスティッジ」「リヴァーサイド」の(動く)アルバムジャケのよう(例えば「After Hours」)。
仏代表、その娘、情婦たちの思いに触れながら、それらを呑みこんで何事もない顔の乾いた大都市ニューヨークの夜そのもの。街灯、ヘッドライト、ネオン。そこを離れらない人々。そこを泳ぐストレンジャー2人。これこそが彼の撮りたかったことかも知れない。
★オリジナルデータ:
Deux Hommes dans Manhattan、(英題Two Men in Manhattan1959)、FR, オリジナル・アスペクト比(=劇場上映画面比)1.37:1。59年配給Columbia Films、90年リバイバルGaumont。84min. B&W、Mono、NegativeFormat &Printed Film Format(35mm)
★このレビューのコードのDVDについて(ASIN:B000A0K5M8、JAN:4523215015233(2005年紀伊國屋邦盤DVD):
既存フッテージ部分(景色等)やゲリラ撮影と思われるシーンはやや粗く傷がちらほら。全体では傷・ノイズ、滲み・甘味等少なく、相対的には製作年代を考えれば秀。諧調は良く出ていると思う。
リージョン2対応、NTSC プレス盤
映像仕様は4:3、画面アスペクト比:スタンダード(オリジナル・アスペクト(=劇場公開比)どおり)
片面 1層、84min、B&W. MPEG2
音声:仏語(モノラル、Dolby Digital)
字幕:日本語、On ・Off 可
メインメニュー、チャプターメニューあり、ピクチャーディスク
〇映像特典:仏予告編(4:3、モノクロ、約3分半、字幕なし。画質は本編に劣る)
〇音声特典:― 〇付属物:20ページリーフレット。解説や写真(モノクロ)が充実。
発売:イマジカ。販売:紀伊國屋書店、2005年 KKDS249
★本サイトで買える他の商品:
2010年に紀伊國屋から廉価盤DVD再発。2015年にIVC社から発売(DVD, 初BD。初HDマスター化、と本サイト頁に書かれている。特段のレストア情報はない)Import BDは略。
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2011年1月3日に日本でレビュー済み
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モノクロ写真やモノクロ映画を観るのが好きだ。理由はよくわからないが、写真も映画もモノクロのほうが奥行きがあるような気がする。ミステリー系の映画はノスタルジーや懐古趣味ではなく、やっぱりモノクロに尽きると思う。
これは監督・脚本・撮影、そして主人公の二人の男のうちの一人をメルヴィル自身が担当したフィルム・ノワール(ハードボイルド)。
ストーリーはハードボイルドの典型だが、主人公を二人にしたことでこの映画は他に類を見ない「男のドラマ」になっている(アメリカ映画だったら、主人公を一人にしただろう)。
メルヴィルがフィルムに封じ込めたマンハッタンの当時の風俗がいい。音楽を担当したマルシャル・ソラルによるジャズも雰囲気たっぷりだ。
この作品、決してメルヴィルの代表作というわけではない。けれども、メルヴィルを語るときに外すことのできない作品であることは間違いない。
まして、この作品が撮られた後(ということは、1958年以降)のフランス映画の流れを展望するときに重要な役割を果たす作品である。映画の舞台として見たときのアメリカへの憧れがこの映画の基本にあることも忘れてはならないだろう。
これは監督・脚本・撮影、そして主人公の二人の男のうちの一人をメルヴィル自身が担当したフィルム・ノワール(ハードボイルド)。
ストーリーはハードボイルドの典型だが、主人公を二人にしたことでこの映画は他に類を見ない「男のドラマ」になっている(アメリカ映画だったら、主人公を一人にしただろう)。
メルヴィルがフィルムに封じ込めたマンハッタンの当時の風俗がいい。音楽を担当したマルシャル・ソラルによるジャズも雰囲気たっぷりだ。
この作品、決してメルヴィルの代表作というわけではない。けれども、メルヴィルを語るときに外すことのできない作品であることは間違いない。
まして、この作品が撮られた後(ということは、1958年以降)のフランス映画の流れを展望するときに重要な役割を果たす作品である。映画の舞台として見たときのアメリカへの憧れがこの映画の基本にあることも忘れてはならないだろう。
2008年2月24日に日本でレビュー済み
本作はジャン・ピエール・メルビルがパリを舞台に書きおろした「AFP発」という脚本(フランス大統領が愛人宅で心臓麻痺により死亡するという話)を舞台をニューヨークに移して撮った作品。物語としての完成度は後の彼の作品と比較すると物足りないかもしれないが、作品を観て驚くのはあらゆる点でヌーベルバーグの作品や後のフィルム・ノワール的な作品に影響を与えていることがわかるところだ。
ジャン・ピエール・メルビルが撮影する夜のニューヨークの風景はゴダールの「勝手にしやがれ」のパリの夜景に完全に踏襲されているし(観ていると2つが完全にかぶる)、ストーリー展開の細かな設定はウォルター・ヒルの「48時間」を思い起こさせる(相棒のピエール・グラッセは「48時間」のニック・ノルティ同様アル中で、ウイスキーの小ビンを持ち歩くし、初めて立寄るのがレズビアンだったりするところなど多数ある)。
全編光と影のコントラストでつむがれた美しい映像と、フレンチジャズにより構成された男達の友情と決裂(特にピエール・グラッセ演じるカメラマンのデルマスは素晴らしい)を描いたストイックな作品は最近ではなかなか観られない逸品だ。
ところで、このDVDには解説の小冊子が入っているが、内容のほとんどがルイ・ノゲイラ著「サムライ」から引用されている。この小冊子でエッセンスはつかめるが、原著の方がメルビルの人となりがわかり面白いのでこちらをお薦めする。
ジャン・ピエール・メルビルが撮影する夜のニューヨークの風景はゴダールの「勝手にしやがれ」のパリの夜景に完全に踏襲されているし(観ていると2つが完全にかぶる)、ストーリー展開の細かな設定はウォルター・ヒルの「48時間」を思い起こさせる(相棒のピエール・グラッセは「48時間」のニック・ノルティ同様アル中で、ウイスキーの小ビンを持ち歩くし、初めて立寄るのがレズビアンだったりするところなど多数ある)。
全編光と影のコントラストでつむがれた美しい映像と、フレンチジャズにより構成された男達の友情と決裂(特にピエール・グラッセ演じるカメラマンのデルマスは素晴らしい)を描いたストイックな作品は最近ではなかなか観られない逸品だ。
ところで、このDVDには解説の小冊子が入っているが、内容のほとんどがルイ・ノゲイラ著「サムライ」から引用されている。この小冊子でエッセンスはつかめるが、原著の方がメルビルの人となりがわかり面白いのでこちらをお薦めする。