くるりがいわゆる「本格的ロック」に傾注していた時期の作品。本作のみのアメリカ人ドラマー、クリス=マグワイアーと、彼に「サムライ」と呼ばれた大村達身の存在が非常に大きい。特にクリスは手数は多いがやたら連打するわけではなく、アクセントの付け方に特徴があるone of a kindのドラマー。セッテイングや叩き方も含め、非常に「見せる」ドラマーだった。一方で楽曲は決してドライなアメリカンロックにはならず、ジャケットに象徴されるような日本的な「ウエットな」情緒も感じさせる。早朝の長距離バスターミナルを唄った「グッドモーニング」から、終末の予感に立ち向かう「How To Go」までの時間的な流れの配列も秀逸。「黒い扉」のようなPink Floyd的(あるいはSupergrass的な?)サイケロックも、欧米ロックの模倣の域をはるかに超えた本格派だ。再度、ジャケットの話に戻るが、この黄昏時の浅草の写真は、日本的でも、中華的でもあるようで、そのいずれでもないどこか魔界のような怪しい雰囲気を漂わせ、一度見たら忘れられない強い印象を残す。くるりの全アルバムでも、ベストのジャケットだと思う。
自分がくるりにのめりこむようになったきっかけのアルバムです。「魔法のじゅうたん」でくるりを知ったのですが、当時はその曲以外はあまり興味が湧きませんでした。しかし、ある日YouTubeで関連動画を見ていると「HOW TO GO」に行き着き、そのイントロからもっていかれてしまいました。なんていいメロディーを鳴らすんだ・・!と。今ではこのアルバムに収録されているHOW TO GO、ロックンロール、モーニングペーパーはくるりの曲で五本の指に入るお気に入りの曲です。