猫の鳴き真似や、ちょっと不貞腐れたように甘く歌い上げる冒頭の曲
から一転するや、その後の太くザラザラした音に合わせて、だるそうに
響くハスキー・ボイスが、心外なほど重いサウンドに映えている。
L.A出身のギター兼ボーカルのAnnieとドラムとキーボードを
同時進行で演奏するとてつも無く器用なMicahの男女2人組Giant Drag。
シンプルな構成の裏をかいた、厚みがあり湿り気を帯びた音が好印象。
“Cordial Invitation”や“This Isn't It”の柔らかいメロディライン、
グランジへの傾倒を思わせるベース・ラインの“Yflmd”、“Pretty Little
Neighbour”のギター・リフは1曲目の“Kevin Is Gay”にも通じ、
魅力的で耳に残る。エフェクターを通さずして割れた音の出る
Annieの声も出色で、それが見事に生きたのが続く“High Friends
In Places”。ヘヴィーな展開ながら、サビの泣き所は押さえている。
プレスの写真から伺える、可愛いくもどことなく生意気そうな
Annieの個性は勿論彼らのサウンドの核には違いないが、後ろに
控えめに佇む相方も、その突出したバランス感覚を活かして
かっちりした音を出している。全体の作りにはまだ統一感が無く、
幅広い表現が可能が故の器用貧乏ともとれる曲構成に多少の
違和感は生じるが、結果として一本調子に終わらないバラエティ
の豊かさが功を奏し、飽きずに一枚聴き通せる妙な説得力を放った良作。