韓国には兵役がありますが、これは監督が実際にDMZに配属されていた時の体験を元にした映画だそうです。時は、朴大統領暗殺前夜の1979年。
前半は、軍隊生活の厳しさや訓練、理不尽ないじめ(どこでも軍はこうしたものだそうですが、最近もいじめが原因で韓国兵が他の兵を銃殺して自分も自殺した事件が問題になりましたね。)また、それとは対照的なコミカルな出来事、どこか滑稽な男ばかりの生活が淡々と描かれていきます。
このまま何も起りそうにないような穏やかな雰囲気の中、朴大統領暗殺事件が起こり、それに乗じて北朝鮮側が韓国に侵入。仲間の兵士が何人か殺されてしまいます。そこからは雰囲気が一変、今にも北が攻め込んできそうな緊迫感の中、主人公は初めて、本当に自分も殺されるかもしれない戦争というものを実感することになります。DMZ内で、いつどこから敵があらわれるかわからない戦闘シーンは緊張感に満ちています。
北朝鮮が掘ったトンネルが20もあり、当時はいつ突然、そこから北朝鮮軍があらわれるかと人々が戦々恐々としていたとか、以後、何度も、陸路から海路から侵入が試みられ、そのたびに防衛、射殺などが繰り返されてきたということをこの映画で初めて知りました。
韓国には何度か旅行に行ったことがあり、板門店も、第3トンネルも、高城展望台なども訪問しましたが、あまりの平和さに現在も実は戦時下体勢なのだということをつい忘れてしまいます。韓国の若い人たちの中にも、朝鮮戦争当時やこの頃のことを実感として知らず、北朝鮮に同情や共感を持つ人たちが多くなっていると聞きますが、危ういことだと思います。
本編とともに、特典が見ごたえがあります。メイキング、監督のインタビューなど、この映画が作られた背景や経過がよくわかるようになっており、軍の協力が得られず、セットも制服も全部自分たちで作ったことなどが述べられています。
また、ちょっとたよりない新兵の主人公を演じるキム・ジョンフンですが、どこかで見た顔だなと思いながら、最後まで「宮」の皇太子のいとこ役だったとは気がつきませんでした。「宮」が茶髪で甘い雰囲気のプリンスだったのに対して、この映画では様々な体験をすることによって成長し大人の顔になっていく青年の役をしっかりと演じています。また、先輩役のパク・ゴンヒョン(コニョン)が渋くて男も惚れる男といった感じです。
ラストは、韓国や日本、そして香港映画にも多い、いい意味での甘いところがあり、センチメンタルすぎるかと思わないでもありませんが、全体に大変よくできた映画だと思います。おすすめです。