これは、NHKとABC(米)が制作したドキュメンタリーです。この作品は明治から昭和にかけての日本にフォーカスを当てた物。
ほぼモノクロ映像ながら見応えがあります。世界各地から集めた回顧録等挿入しながら、貴重な映像の数々を落ち着いたナレーションで紹介している。
日本で人力車に乗るラフカディオハーンの回想や、明治期の大相撲の映像、アメリカやフランスで作られた日本を題材にした映画、日本の植民地下に入った台湾の映像等も見られます。日露戦争の英雄、乃木将軍や皇太子時代の昭和天皇の映像、満州国皇帝溥儀について等、実に幅広い。
この種の作品にありがちな右か左かによる事もなく、至って中立的な内容。例えば、日本の明治維新への評価や、太平洋戦争末期の大東亜会議にインドの独立運動家ボースが参加したエピソード等に触れる一方、日本支配下の朝鮮半島に於ける東亜日報の反日論説や、太平洋戦争末期のガンジーの対日公開状等挿入し、バランスの良い内容になっている。
チャップリン、ヘレン・ケラーなど戦前期の日本を訪れた人々を紹介しながらも、日米開戦により収容所へ送られる日系人の姿など生々しい映像も挿入される。そして、原爆投下から終戦へ、マッカーサーの支配、昭和天皇による巡幸、東京裁判の開廷から東西冷戦の勃発。テレビ放送の開始から、変わりゆく日本というラスト。
この頃のNHKスペシャルは硬派で観易かった。非常に大人な作りで、挿入曲、加古隆氏作曲の「パリは燃えているか」も作品にフィットする名曲である。