98年の復活アルバムともいえる「Karma」以来、確実に音楽活動の基盤を確立するべく積極的に全米ツアー、アルバムリリースを続けているリック・スプリングフィールドだが、今回は一曲を除きすべてカバー曲を集めたアルバムで新たな境地を求めた。前回のハードかつギター中心で、彼の内面にある「怒り」を露骨に表現した楽曲中心のアルバムとは180度方向性が変わり、非常にメローでムードのある楽曲ばかりを集めたアルバムとなっている。
当然リック・スプリングフィールドファンならば彼の曲作りの才能に魅了されているので、「なぜカバー曲を?」と疑問に思ってしまうところだが、曲のアレンジはかなりオリジナルに近い状態になっているため、その分、リック本人のボーカルが前面に強く押し出される。彼の以前よりハスキーになったボーカルが非常にうまく全曲を歌い切っていて、シンガー、リック・スプリングフィールドが非常に輝くアルバムに仕上がっている。特に、「Broken Wings」のオリジナル・シンガー、リチャード・ページとのデュエット、またジャズナンバーの「Let's Go Out Tonight」、「Blue Rose」のボーカルは必聴。
当初、カバー曲のアルバムと聞き、実際にオリジナルとの聞き比べなども考えたが、このアルバムを数回聞くうちに、リック・スプリングフィールドのボーカルでのこれらの楽曲が非常に心地よく響き、オリジナルなどどうでもよくなった。