とても丁寧でなだらかで淀みない、美しいピアノでした。
特に20番は全体的にゆったりとしたテンポなので優美な感じがします。
個人的にはもう少し緩急・強弱の勢いがはっきりした演奏のほうが好きで、
こういう20番は初めて聴きましたが(ハスキルとかブリュショルリが好きです)、
ミニアチュールを描くかの様なこまやかさや余白の美とか、そんな風なものも感じました。
カデンツァは確かにすごく個性に溢れていて、思わず身じろぎもせず聴き入ってしまいます。
もし会場にいられたなら、文字通り息をのんで、固唾をのんで見守っていたでしょう。
少しの雑音でも入って欲しくない、そう思わせる様な静かで厳かな雰囲気でした。
私には音楽の専門知識は無いので感覚的な観点でしか表現出来ないのですが・・・。
25番は、(こういう演奏もあるんだ)と、新鮮でした。
針先でなぞるかの様にとてもとても繊細で、まるで壊れものの様で、
かと思えばコロコロと転がる軽やかな音色もあって愛らしさを感じたり。
好みとしては20番や24番が一番好きなのですが(短調が好きみたいです)、
バロックぽさの感じられる25番もやっぱり好きです。
水上の音楽みたいでとても心地良く感じられるので・・・。
オーケストラの善し悪しは、これもまた表現する言葉をあまり持たないのですが、
全体的に控えめというか、音を張り上げ過ぎない優しげな演奏という印象です。
ピアノパートの時はそれこそピアノにそっと寄り添う様な感じ。
20番はオーケストラの存在感もかなりある曲だとどこかで目にした記憶があるのですが、
そういうものを味わいたい場合はちょっと物足りないかもしれません。
指揮のガーベン氏のミケランジェリとの関わりをブックレットで知って、
この巨匠との事を綴ったという彼の著書もぜひ読んでみたくなりました。
20番の最初・終了後・25番の終了後、と3箇所に入っている拍手がいいなと思いました。
この日の雰囲気、素晴らしい演奏が聴けた喜びを一緒に味わえる様な気持ちになります。
(もしかして時にお邪魔に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、
トラックは区切られていますので、抜いて編集することも出来ます。)