エミリー・ブロンテ原作の同名小説を、吉田喜重監督が構想28年の歳月を費やし映画化。
この映画の良さは、何と言っても主演:松田優作の鬼気迫る怪演ぶり、そして田中裕子、石田えり、高部知子、伊藤景衣子等女優陣の体を張った演技の凄さに尽きる。
作品を見終わって一つ疑問に思うことは、何故吉田監督は鎌倉時代を時代背景として選んだのだろうか?ということ。
映画シナリオの根底にあるのは家父長制であり、確かに同制度の起源は武家社会が発生した中世にあるものの、社会システムとして確立されたのは明治期以降である。
19世紀に書かれた原作に対しても、また吉田監督の脳裏にあったであろうウイリアム・ワイラー監督によるハリウッド映画に対比する意味でも、近代を時代背景とする映画も見たかった。