英ウェールズ発3ピース・シューゲイザーバンド、The Voicesのデビューアルバム。朧げな輪郭を成しながら渦を巻く音の洪水が、深い混濁の彼方へ意識を導く。
シンセサイザーの細かなパルスの明滅を、きめ細やかな質感のファズギターのヴェールが覆っていく。美しい残響(ディレイ)の彼方から漏れ聞こえる、男女混成ヴォーカルの柔らかな「歌」。絶え間なく溢れ出す催眠的ともいえる多層的な音のリフレインが、意識を混濁と覚醒の狭間にて揺れ動かし、心地良い昂揚空間へ飲み込んでいく。一方、Tr.3"Nobody Knows The Way I Feel"では、サイケガレージ風の尖ったギターリフと深いリヴァ-ヴがかったボーカル、攻撃的なベースラインが反復し、Spacemen3の"Revolution"のような横顔を見せる他、Tr.7"Take The Pain Away"でも、Spiritualizedを思わせる(というかほとんどある楽曲のカヴァーに聞こえる、、、)浮遊感に満ちたファズの洪水を、空間いっぱいに横溢させる。
良くも悪くも、アルバムを通してのメリハリは薄い。先人達のモノマネだと言ってしまえばそこまでだが、楽曲のクオリティは中々に高く、その昂揚感もまた素晴らしい。休日の晩などに聴くシュチュエーションは限定されそうだけれども、個人的には非常に好きな音だ。美しい音の洪水に浸ってしばし我を忘れたい人なんかにも結構オススメ。Slowdive好きな方も是非ご一聴を。