『007/ダイ・アナザー・デイ』(Die Another Day)('02)
出演∶ピアース・ブロスナン、ハル・ベリー、トビー・スティーブンス、ロザムンド・パイク、リック・ユーン、ジュディ・デンチ、ジョン・クリーズ、サマンサ・ボンド、コリン・サーモン、マイケル・マドセン、ウィル・ユン・リー、ケネス・ツァン、ミハイル・ゴアヴォイ、ローレンス・マコール、マドンナ、ホ・イー、レイチェル・グラント、エミリオ・エチェバリア、シモン・アンドルー、トレバー・ホワイト、クリストファー・ショニング、マーク・ディモンド、イアン・ピリー
監督∶リー・タマホリ
前年度のアカデミー主演女優賞受賞者のハル・ベリーをボンドガールに使うなんてスゴイ……んだけど、受賞作『チョコレート』と本作『ダイ・アナザー・デイ』の公開間隔は1年足らずみたいだから、当然ノミネートや受賞の時期には、もう本作の撮影は始まってたでしょうね。プロデューサーや映画会社は、撮影中の作品に箔が付いてニンマリだったのでは?(笑)
今作で、もう一人のボンドガールを務めたロザムンド・パイクも、のちに『ゴーン・ガール』でアカデミー主演女優賞にノミネートされる実力派女優だ。たまたまだろうが、5代目ボンド=ブロスナンになってから、『ゴールデンアイ』のファムケ・ヤンセンや『ワールド・イズ・ノット・イナフ』のソフィー・マルソーなど第2のボンドガールがやたら目立っているような気がします。
今回のカタキ役は北朝鮮。2002年の映画なので、北朝鮮が実際に核実験を実施したり、頻繁に弾道ミサイルの発射実験を行ったりして"力"を見せびらかす前のことだ。この時点の北朝鮮の力で、本作に登場するようなハイパー衛星兵器で世界を脅かすという設定は突飛すぎる気もするが、欧米の映画人はミステリアスなアジアの国を過大評価してないだろうか?(「何をしでかすか判らない」という意味では確かにコワイけど……(笑))
いつもなら、(本筋と関係ないことも多い)プレタイトルの派手なアクション→タイトル、クレジット→本題の話という構成だが、今回は北朝鮮でのプレタイトル・アクションの後、ボンドが北朝鮮の捕虜になってしまい、14か月に渡る拷問を受けてボロボロの状態で本題が始まるというかなりシリアスな出だしです。
[物語] 英国情報部MI6のジェームズ・ボンド(ブロスナン)は北朝鮮に侵入、闇のダイヤモンド商人に偽装して非武装地帯にある基地を訪れる。武器の密輸を行うタン・サン・ムーン大佐(ウィル・ユン・リー)を殺そうとするが、大佐の側近ザオ(リック・ユーン)に正体を暴かれ、銃撃戦に。ホバークラフトの追撃戦の末、大佐を滝つぼに叩き落とすが、大佐の父ムーン将軍(ケネス・ツァン)に捕われ、監禁・拷問の憂き目に……。
14か月後、中国の情報部員を殺して捕まったザオとの捕虜交換で、ボンドは解放される。だが、米国スパイが北朝鮮で処刑された件での機密漏洩の疑いを掛けられたボンドは、上司M(デンチ)から00ナンバーを剥奪される。香港で英国戦艦に拘禁されたボンドだが、自分の疑いを晴らし、機密漏洩の真相を探るために脱出に成功。旧知の中国情報部員チャン(ホ・イー)の協力で、ザオがキューバに飛んだという情報を得ると、後を追ってキューバへ。
ザオが整形手術のためロス・オルガノス島の病院にいると判明。情勢を探るボンドは島の対岸のビーチで、謎の女ジンクス(ベリー)と出逢い、彼女が島へ渡るのを確認する。ザオと接触するため、島の病院へ潜入したボンドは、病院でジンクスと鉢合わせ。彼女はNSA(アメリカ国家安全保障局)のエージェントだった。共にザオを追い詰めるが、今一歩で取り逃がす。ザオの遺留品の中には、数粒のダイヤモンドがあった。
そのダイヤモンドの刻印から、この1年で急速にのし上がってきた経歴不明のダイヤモンド王グレーブス(スティーブンス)の物と判明。ボンドはグレーブスと接触を図り、グレーブスの招きで、アイスランドに作られた巨大な氷の城で行われるという一大イベントに参加する。グレーブスの秘書で実はMI6の二重スパイのミランダ(バイク)もおり、さらにはNSAのジンクスもやってくる。グレーブスとは果たして何者? そして彼は何を計画しているのか……!?
北朝鮮のムーン将軍役は、懐かしい『男たちの挽歌』シリーズの"タクシー屋のキンさん"ではありませんか……いや失礼、タクシー会社のキン社長を演じたベテラン俳優ケネス・ツァン。ジャッキー・チェン、ミシェル・ヨーの『ポリス・ストーリー3』では、ラスボスのチャイバ役でしたね。
ブロスナンがボンドになって以来、Mの秘書マネーペニーを演じてきたサマンサ・ボンドが、妄想でボンドと熱〰いラブシーンを演じるなど、なかなかいい味を出してます。この作品でマネーペニー役を卒業する彼女へのご褒美でしょうか。
アクション・シーンは相変わらず工夫を凝らした派手なシーンが続々。序盤のホバークラフト・アクションも面白いが、ボンドのアストンマーティンに対するザオのジャガーという氷上カーチェイスが楽しい。いつもは、秘密兵器搭載ボンド・カーのワンマン・ショー(?)だが、今回はジャガーの方も秘密兵器満載で小型ミサイルが飛び交います!