77年発表の9作目。トニー・ヴィスコンティのプロデュース作。ベースが元WOLFのデク・メセカーに交代した。パンクの波が押し寄せていた時期の作品であり、彼らのような演奏主体のグループにはかなり辛い時期だったと思う。実際彼らは本作発表の後、レコード会社から契約を切られ一時的とは言えライヴ活動も停止している。ジャケットのデザインからしてこのアルバムの発表の前から契約の解除は知らされていたことなのかもしれないが、それを意識したのか、おそらくキャラバン史上最もシンプルかつポップという楽曲ありきの作品に仕上がっている。パイのヴォーカルを中心にしたポップ・ロックにこだわった作品と言う意味において本作もしくは前作が最高傑作と言えると思う。そしてこの作品がパイの描いていたキャラバンの完成型なのだと思う。もはや完全にアメリカン・ポップなサウンドである。ただし5.のようなキャラバン史上最もスリリングと言っても良いハードなインプロも聞かれるため単純にポップ作とも言い切れない。実際にこの曲もかなりの名曲である。
1.のウォームなポップ曲は前作よりも更に一皮剥けた印象であり、アメリカン・ポップそのままの明るい作品に仕上がっている。オルガンもカンタベリーというよりもそのままポップスという演奏である。2.も優れたポップス。メロディの出来という意味では従来のキャラバンとは一味違った魅力を放っている完成度の高いものだと思う。3.は南国ムードの穏やかな雰囲気の佳曲。
一時的に活動を停止していたグループは79年にはライヴ活動を復活。80年にはアルバム『The Album』を発表している。