ジェス・フランコの映画が苦手、という方でもこのサントラはお気に入るのでは?
本アルバムは、いわゆる「シブヤ系」ブームの真っ只中の'90年代に、輸入盤でCDショップで販売され、一部で結構な人気を誇ったアルバム。もう何年もの間、「面出し」状態で陳列されていたのを記憶している。スペインの女優、ソリダッド・ミランダのエロティックでサイケなこのアルバムジャケットを初めて見た時は、「何だこの映画は!?」と激しく興味をそそられた。筆者も、この音楽と出逢った頃は、『ヴァンピロス・レスボス』は未見。それ以来、この映画が観たくて悶えたものだった。
本アルバム、サントラと書いたのだが、ジェス・フランコ監督の『ヴァンピロス・レスボス』『シー・キルド・イン・エクスタシー』『恍惚の悪魔・アカサヴァ』の3作品で使われた音楽を合わせた、ちょっとしたコンセプト・アルバムのようなもの。なぜか映画のDVDソフトには、作曲:ジェス・フランコと記載されているが、それは間違い。Manfred Hubler & Siegfried Schwabという、れっきとした作曲・編曲者がおりますよ。
シブヤ系ブームは、'60、'70年代の独特のサウンドを次々と発掘していったムーブメントだった。それまで古臭いものとして忘れられかけていた音楽を「オシャレ」「カッコイイ」目線で再評価。そして本アルバムは、まさにその典型的な「あの時代」ならではのサイケでファンキーでモンドな感じが存分に味わえる逸品。タランティーノが『ジャッキー・ブラウン』でこのアルバムの音楽を使っていた時は、そのマニアックぶりにニヤリ、としたものだ。
まず1曲目の「Droge CX9」からスイッチオン。ストリングスにキーボードにトランペットにドラムのアタック攻撃にマイッタ!
続いて2曲目の「The Lions and the Cucumber」は、タラが『ジャッキー・ブラウン』で使っていた曲。いきなりオッサンの気味悪いうめき声ではじまり、しゃっくりだかサルの吠え声のような変な声が連打、にトランペットも負けじとシャウト。実にMONDO!いや〜'60sですねぇ!
3曲目「There's no Satisfaction」は女吸血鬼・ナディーンのテーマ曲か。永久の命を持った女の、倦怠と孤独を顕わした曲。キーボードのリズミカルなプレイと、冷笑的なスキャットをバックに、陽光の中、砂浜を走るソリダッド・ミランダの残像がゆらめく。
4曲目「Dadicated to Love」は、シタールのエキゾチックな音を、ファンキーに使うという大胆解釈な音楽。電子音楽(死語)と民族楽器の幸福なコラボ。いや、シタールがノリノリで踊ってますよ!
6曲目「We Do'nt Care」は、オトナシイ始まり方だと思いきや、途中で来ます来ます!シタールもデロリロリン・・・。
8曲目「The Ballad of a Fair Singer」は見知らぬ中東の街並みの迷宮へ誘われてゆくような曲。ここでも、モリコーネ音楽を連想するようなビザールな女性スキャットが効いてます。
9曲目「Necronomania」や11曲目「The Message」は、'60年代のダルでロマンティックで、デカダンな匂いが漂うグッドな曲。
そしてラストを飾る14曲目「Countdown to Nowhere」は、『ヴァンピロス・レスボス』のオープニング・タイトルを飾った曲。チューニングがずれたラジオが、異界の音を拾ってしまったかのような、暗い海上を漂流するような音楽だ。スポットライトに浮かび上がった舞台で、深紅のスカーフを一糸まとった女吸血鬼の裸形が踊る・・・孤独のダンスを。
Funky, Groovy, Bizarre & Mondo !!
眠れない夜は、「Vampyros Lesbos Sexadelic Dance Party」に身を委ねて、ソリダッド・ミランダとデカダンのダンスに身をくねらせろ!