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『夜の大捜査線』(In The Heat Of The Night)('67)
出演∶シドニー・ポワティエ、 ロッド・スタイガー、 ウォーレン・オーツ、リー・グラント、ラリー・ゲイツ、ジェームズ・パターソン、ウィリアム・シャラート、ピーター・ウィットニー、クェンティン・ディーン、ビア・リチャーズ、スコット・ウィルソン、ティモシー・スコット、アンソニー・ジェームズ、フレッド・スチュワート、カリル・ベザリール
監督∶ノーマン・ジュイソン
黒人＋白人のバディものポリス·ストーリーの走りとなった作品だろうか。もっとも､昨今の映画やTVの刑事ドラマのような同じ署に属する二人組の刑事ではなく､殺人事件の起きた田舎町を私用旅行で通りかかった殺人課の黒人敏腕刑事と､殺人事件未経験の小さな地元署の白人署長が､反発し合いながら事件を捜査するという変則的な"バディもの"だ。
舞台が南部ミシシッピ州の田舎町ということで､ロコツな黒人差別の中で､北部出身のエリート黒人刑事が､「目障りな黒人なんか殺してしまえ」とばかりの勢いの地元の荒くれ男たちを向こうに回して捜査する。人種差別テーマもしっかり盛り盛り。"相棒"の警察署長も､部下の警官たちも全員黒人嫌いの差別主義者。さらに黒人の中にも､事件捜査する彼を"白人の手先"と敵視する者もいて､まさに四面楚歌だ。
この９年前に作られたポワティエの主演作『手錠のまゝの脱獄』(手錠で互いに繋がれた白人·黒人の脱獄囚の話)の発展型とも言える映画だ｡(舞台も同じ南部。あちらはサウスカロライナ州ですが…)
[物語] ミシシッピ州のスパータという小さな田舎町。暑い夏の深夜､パトロール警官サム(オーツ)は､道端で撲殺死体を発見する。犠牲者は､町に多くの労働需要を生み出す新しい工場を建設中の実業家コルバート。私用旅行中で､たまたま事件に関わった殺人課の敏腕黒人刑事ティッブス(ポワティエ)は､行きがかりから､殺人事件に不慣れな地元警察に協力することになり､黒人嫌いのギレスピー署長(スタイガー)とともに､捜査の陣頭に立つことに。
署長や署員は黒人の関与を嫌い､ティッブスを追い出そうとする。だが､死亡推定時刻も満足に割り出せない町医者や､田舎警察の無能ぶりに怒り心頭の被害者未亡人レズリー(グラント)は､有能さが滲み出る黒人刑事に捜査を任せないと新工場建設を止めると宣言し､捜査権はティッブスの手に。
被害者の財布を所持していたコソ泥ハーヴェイ(ウィルソン)､大勢の黒人労働者を抱える大農園主で､工場建設反対派の旗頭エンディコット(ゲイツ)､事件直後､急に預金が増えた巡査のサムなど次々と浮かぶ"白人"の容疑者たち…。
黒人に嗅ぎ回られるのを嫌う荒くれの白人青年たちが､凶器を手にティッブスを襲撃するが､彼らの動きを読んでいたギレスピー署長が現れ､ティッブスを救う。署長は､ティッブスを追い払いたいと思う反面､細かな物証から真相を手繰り寄せようとする彼の仕事ぶりに一目置くようになっていた。
そんなある晩､ロイド(パターソン)という青年が､10代の妹ドロレス(ディーン)がサム巡査に妊娠させられたと言って､署に怒鳴り込んでくる。それを聞いたとき､これまでのドロレスの行状について耳に挟んでいたティッブスの脳裏に閃くものがあった。事件は予想外の方向に急転回し始める……!!
この映画､アカデミー賞で作品賞､脚色賞､主演男優賞(スタイガー)など５部門で受賞し､シリーズ化されている。ハリウッドでは､'70年代以降ポリス·アクション路線のヒット作品·シリーズが続々と生み出された。そのキッカケとなり､流れを作ったのは､ともに'71年公開の『フレンチ·コネクション』と『ダーティ·ハリー』と言われているようだ(自分がそう思い込んでるだけ？)。
しかし､それ以前の『夜の大捜査線』('67)､『ブリット』('68)が､ポリス·アクション·シリーズの原点になっている気がする。少なくとも､『夜の〜』は､刑事バディものの原型だし､『ブリット』は､カーチェイス､カーアクションの原型だと思う。
[余談] アメリカ映画を見ていると､いつも自分の英語力の乏しさが恨めしい。本作『夜の大捜査線』でも､登場人物のほとんどである南部人が喋る南部訛りやスラングと､北部出身のエリートである主人公ティッブスの"正しい英語"の違いがハッキリ解れば､もっと楽しめたろうに…。
署長始め南部人たちがティッブスに対して使う"boy"という呼び掛けが､黒人に対して白人が使う侮蔑的な呼び掛けに当たる言葉で､黒人が嫌う言葉であることは､『手錠のまゝの脱獄』か何かで知っていたのですが…。南北戦争後の時代設定のものが多い西部劇などでは､訛りでお互いの出身が解るらしく､お互いに目に見えない壁が出来ているらしいのが､よく解らないのが歯痒いです。
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