♪ヤマタケさんの遺したこれらのヴァラエティにとんだ音源を耳にしてまず思うのは、彼はいわば日本のモリコーネみたいな人だったんじゃないかと云うことーそれくらい氏の作風は多岐にわたり、とても一言で括れるような類いのものじゃあない。
♪そんな“アルチザン(職人)系”コンポーザーの典型にして一つの頂点とも云うべきヤマタケさんの「ワークス」だが、明らかにモリコーネとは異なる側面もあるーつまりは出自がジャズなだけに、例えばロックやソウルの意匠を纏っていても、どうかするとそんな自身のバックボーンが見え隠れしていたりするのだ。
♪それは著名な1stルパンの主題歌たちに於いても明白だし、『プレイガール'69』や何故かディキシー調の「バレーボール応援歌」やなんかの中にもハッキリと見てとれるーそして最もそれが如実に現れているのが、その長いキャリアの比較的初期に書かれた「殺人四重奏」や、もろモダンジャズな『タイムショック』のテーマあたりかも知れない。
♪とはいえやはり氏のワードローブは多種多様だ。ヨーロピアン・ムード(ニーノ・ロータ流?)のM1、アメリアッチを採り入れたM3、ミュージカル風からスウィンギーに展開するM4、よくゝゝ聴けばラテン・インストのM5、エルヴィスの「GIブルース」を思わせるM7、お座敷調の軽妙なM9、吉田正とはひと味違うキャムプなアレンジが印象的なM10、タチ映画の劇伴みたいな洒落たM12、ラテン・ロックっぽいM14等々…
♪面白いのは平多舞踏のために書かれたというM17、18で、いずれも『日本昔ばなし』に出てくるような“和”な題材なのだが、途中からいきなりボサ・アレンジになったりするその茶目っ気(?)にはニンマリとさせられる。とりわけスリー・グレイセスの至高のコーラスが楽しめる後者は最高の仕上がり!!
♪と、氏以外の演者にも簡単に触れておくと、重厚なハーモニーを聴かせるデュークや、そのハリのある唄声が印象的な雪村いづみ、センシュアルさと愛らしさが絶妙に融け合った松尾和子、深々としたバリトン・ヴォイスがダンディ至極なフランク永井、“イナセ”という言葉がピッタリはまる若き日の橋幸夫、そしてモチロンもはや『ルパン』の世界観には欠かせないワンピースとも言うべきチャーリー・コーセイなど豪華なメンツが集い、ヤマタケ作品のヴォーカル・サイドを華々しく彩ってくれているー
♪濱田高志氏による解説も例によって詳細かつ的確で、筆者のような超の字のつくビギナーにとってはじつに有り難いアンソロジーと言える(他方でコアなファンにも目配りしたラインナップなのだそう)。ちなみにケース裏の曲目リストでは M12が「試験勉強」でM13が「電気洗濯機」ですが、実際には逆の並びになっています。