デビューから5年目までの計8作品から、彼女自身が選曲し、当にakikoのエッセンスが抽出されたベストです。
新しい感性で音楽を描ける創造性と、古き良きものをしっかり奏でられる技術との両方を同居させられるジャズ・シンガー、akiko。
彼女のジャズの面白さは両者の良いところをうまく混合させ、akiko独特のジャズ・デザインを生みだすところです。
その音楽はしなやかにスタイリッシュで、徹底したクール&ビューティーが貫かれています。
例えば、「しなやか」と言いましたがつまりは、サウンドデザインどれにも余裕を湛える快適さ、ナチュラルさがあるんです。
着飾る仰々しさではなく、さりげないドレス・アップの中に光る品の良さ、美しさ、それらを音楽の中に感じます。
一方そういうサウンドの上で物語を描ける彼女の歌の技術も、非常にしなやかで独特なものがあります。特に歌を操る唇や舌の、丸みのある軽やかなスウィング。
これこそが音になめらかさや遊び部分をもたらし、上記のナチュラルでお洒落なアレンジには、品(のあるヴォーカル)を添えますし、
また加速するテンポにはゆとりを、更にスローなリズムには丸み(遊び部分)がアンニュイをもたらします。
しかし、akikoの音楽をみる際、きっと大事なのは、ただお洒落な音楽なのではなく、或いはただ歌がうまいということでなく、
彼女の創造した美的世界、思念がしっかり音楽に反映されている点ではないでしょうか。
つまり、彼女の呼吸や間合い、歌の細部にその沈静した美意識が敷かれているというポイントです。
音符や休符にまでakikoの描く人間模様、その背景を彩る色彩感覚が降りているので、ジャズの深みや、ゆらぎ、気だるさを作り得ているんですね。
行間に潜んだヒロインの心の残照を感じ取れる表現があります。
確固とした世界観があり、それに基づいて音楽がデザイニングされますのでakikoのジャズは、そのドラスティックな姿勢や、美意識、シンガーとしてのポリシーのようなものにも魅力を覚えます。
そしてやはり、行間のかぎろいを独特な風合いで染め上げる色彩感覚や、或いは所作を描くデッサン力。つまりは総合的なデザイン力が素晴らしいですし、
それを具現化する能力が非常に面白いですね。
今作はこれらのずば抜けた側面を感じられるベストに仕上がっています。