81年発表の5作目。前作のアルバム・タイトルによるバンドとの連名で発表された作品。Barnet Dogs は前作にも参加していた元アージェントのロバート(ボブ)・ヘンリット(dr)、デイヴ・ウィンター(b)、リチャード・ブランシャード(vo) の3人から成り、この時期の安定した活動を裏付けている。
1.はまるで打ち込みかのようなシャープでタイトなドラムスにこれまた切れ味の良いハードなギターが絡むスピード・チューン。シャープなコーラス/ハーモニーのきっちりと決まりシンプルなアレンジでありながら極めて完成度の高い、そしてヒット性の高い曲である。ニュー・ウェイヴを引きずったベースが懐かしく響くのは他の演奏がモダンだからだろうか?2.はパンク/ニュー・ウェイヴを意識したかのようなスピード・チューンだが、メロディそのものはオールド・スタイルのロックンロールを引きずっているのが面白い。こちらもテンションの高いギター・ソロを含めてハードでありながら極めて印象的なメロディを持っている。3.はビリー・ジョエル辺りにも通じるロマンティックなバラードだが、ハイ・トーンのヴォーカルを駆使したサビにはフランスのプログレ・バンドのタイ・フォンを思わせる部分もあり。ピアノのサウンドの美しさは特筆ものである。4.はブルースをベースにしたハード・ロックの王道のスタイルを持った曲。もっともコーラス/ハーモニーを駆使したキメの部分やギターにはフュージョン的なテイストも感じられトータルとしてはかなり洗練された仕上がりである。
前作の硬質でタイトなサウンドを守りつつもよりオーソドックスな方向に向いた作品かと思う。したがって前作ほどサウンドに個性はないが、分かりやすさと洗練されたアレンジで楽曲の持ち味を活かしている。無駄な部分を削ぎ落としたためか音のヌケが極めて良く(そもそもの録音も良いのだろうが、どのパートも細部までしっかりと聞こえる)ヘヴィ/ハードな演奏と美しいヴォーカル/ハーモニーのコントラスト、そしてその融合がひとまとめになって迫ってくるかのような作品である。楽曲はハード・ロックが主体で、彼なりのメロディアス/ハード作といった感じだろう。