いい映画はいつも、2つの違う話が織り成す感じがします。アクションと暴力のステイサム映画「ハミングバード」も帰還兵と地域を救う尼僧の話だった。このヴェンダースの映画もイスラエルから来た女の子とアメリカの現実の話。普通は相容れない異なる世界を持つ話なのだけれど、2つが歩み寄るみたいにして偶然が必然化して行く。それが「ストーリーだなぁ」と感心してしまう。
欧州作家らしくヴェンダースはこの映画でスペインのドン・キホーテがアメリカにもいる風情を主役の男性で示している様に感じます。本当にイスラエル生まれのミシェル・ウィリアムズだから尚更実話みたいになる。そしてマザー・テレサの施設の様な貧困層の宿舎に泊まることになるのも、話をここだけに留まらせない事に一役買っていそうです。その辺りの世界への目配りが監督のビジョンでしょう。見る人によって感じ方が変わる映画。絵画のようです。映画をモーションピクチャーと言ったのも納得だなと思う作品です。
見ながら各々の人が何かを思い出すかも知れません、911やその後、又は日本での災害なども。私には…
・沖縄に派遣されている米兵相手にミッション活動をしている人
・モロッコで見ず知らずの私を夕食に招いて美味しいチキンを食べさせてくれた人
・マザー・テレサの施設の1つで世界から来るボランティアの何割かは精薄者の子供にいたずらして帰る問題がある事
・でもそこでただ数日手伝った私に、その後数年経ってもあの時の子供が愛されながら失くなった事を知らせてくれるメールが来る事
・ピストルを常時持った事がある元兵士は道行く人がポケットに銃を入れているのを服の上からでも見つける事
・ホームレスの多い大阪で、仏教のお寺が古着を募って集めて、その古着をホームレスに配っている韓国人のクリスチャン教会に無償で提供した事
誰もがみんな何かの役に立つかも知れないと思うと、何も未だしていなくても気分が良くなると感じてしまう、ただの挨拶でさえ。そんな風に思えるいい映画でした。