映画『ウォーク・ザ・ライン』が描いた世界がジョニー・キャッシュのひとつの側面だとすると、『パーソナル・ファイル』は彼のもうひとつの側面を伝えてくれる。まさにこのアルバムは Another Side of Johnny Cash と呼ぶにふさわしい。
映画では父親との葛藤が描かれていた。このアルバムの中に父親との別れを歌った「アイ・ウォンティド・ソウ」という自作の歌が収められている。生前は口にすることもなかったであろう父への思いが歌われている。
多くのことを伝えたかった、あの老いた人に
彼が春に蒔いたトウモロコシが10フィートになったとか
彼が注文した本が昨日郵便で届いたとか
でも彼は一言もいわず、静かに息絶えた
ディスク1にはこの歌をはじめ、「レター・エッジド・イン・ブラック」「母はいつも家で帰りを待っている」など、家族の絆を歌った歌が多い。アラスカを舞台にした歌もいくつかある。中でもお勧めは「サム・マギーの火葬」である。
ディスク2はすべて宗教歌、賛美歌だといっていい。ここに彼が死後まで封印した「個人的ファイル」の真髄がある。
「ワット・オン・アース」では、次のように歌われる。
もう一マイル一緒に歩いたか、怒った顔に笑顔を返したか
おまえは、崩れそうな虐げられた心を慰めたか
上着をとった者にマントも与えられるか
天国のために地上で何をしようとしているのか
ジョニー・キャッシュがわれわれに残したメッセージである。