音楽作品である以上、演奏内容が最も大事なのは確かだが、それにしてもこのジャケットは見事だと思う。オールドファッションなスクーターに男女がユーモラスな表情で乗っかっているモノクロ写真、実に味のあるモノでLP盤を持っている人が羨ましい。ソニー・クリスはよくパーカー直系と評されるが、その音色はむしろスイング時代の3大アルトの一人ウイリー・スミスに近い。大半の人が、やや抑揚に欠け一本調子だという印象を持ってしまうのはやむを得ないところではある。それでも本作は選曲の良さと、ソニー・クラークの好サポートもあって十分に楽しめる作品だ。ベニー・グッドマン専用の曲(笑)とも思える"Memories of You"を取り上げているところなど愛嬌を感じる(私の拙い記憶では、他にこの曲をレコードに残しているのはセロニアス・モンクぐらいである)。"After You've Gone"もモダンジャズではあまり聴かない曲なので、ここでのクリスの演奏がけっこう新鮮な響きを持っている。