70年代初頭の英国音楽シーンは百花繚乱の状態で、ハード・ロック、プログレ、グラム・ロック
が全盛を奮っていた。しかし、どのジャンルに於いても装飾過多と成りロックの本質で
有る粗野でプリミティブな初期衝動を求める気運が高まっていた。
そんな停滞した音楽シーンに風穴を開けたのがPunkと成るのだが、そのPunkへと
橋渡しをしたのが、”パブ・ロック”だった。
パブロックはムーブメントを表す総称で有り、特定の音楽性が有った訳では無い。
どのバンドも近所のパブリック・バーで演奏しており演者と客との距離感が近かった。
そんなムーブメントの中での硬派で疾走感の有るブルース・ロックを奏でていた とびっきり
のバンドがDr.Feelgoodで有る。
1stと成る本作はRockのストイックさと狂気を感じさせる名盤で’75年の発表。
録音もLive感覚で収録されモノラルにてミキシングされた。こちらはDisc#1に収録され
60年代初頭のブリティッシュ・インベンションのビートバンド達を彷彿させる。
ぶっといグルーブを叩き出すリズム隊をバックにリー・ブリローの腰の座ったダミ声にウイルコ
のシャープで独特なカッティングが乗る疾走感に溢れる名曲が詰まっている。
とても一人で弾いているとは思えないカッティングが冴える名曲#1,裏打ちのリズムが
心地良いこちらも名曲#4等 殆どの曲でウイルコが曲創りを行っているが、そんな
中に混じってジョンリー・フッカーの#2,ミッキージャップの#11,ラリー・ウイリアムスの#13等 ロックンロール
Bluesのカバーが混じる構成で、緊張感の有る楽曲が並ぶ中 ウイルコがボーカルを
取る#2,6, 8 がアクセントと成っている。
#15~18は未発表曲でこちらもモノラルで収録。
問題は”世界初のステレオ・バージョン”Disc#2でマスター・テープからのリイシューが行われ、
マスターの見つからなかった#3,7,8,はステレオ化可能な別バージョンのマスターが発掘されて
いる。
ステレオ・バージョンは#4の様にギターがオーバーダビングされていれば各楽器の分離が
良く成り、聴きやすく成った事は確かなのだが、バンド一体と成ったノリはモノラルに
軍配を上げざるを得ない。
オーバーダビングされていない曲で、ギターとベースが分離されると、音の厚みが減り
迫力が半減しているのよ(泣)逆説的にモノラルでのミキシングがどれだけ効果的だったか
を証明している。
Disc#2にも未発表曲が満載で#17以降は’74年7月8日 Dingwalls,Camden Lock
でのLiveの模様が収録されている。
ホーン・キーボードを従えた編成でフレディ・キングの#17,ヒューイ・ピアノ・スミスの#18,リトル・ウォルター#19
B.B King #21,23等のレアな曲が並んでいる。