この作品は当初から好き嫌い、評価が分かれていた。
amazonでの評価が高いのは、再視聴している昔のファンが多いからではないかと思う。
簡単に言えば、ブリジット・フォンダが スレンダーな体で わななく姿 にしびれた男性ファンからの評価が高く、ブリジット・フォンダに興味がわかなかった人には つまらない映画だったということだろうと思う。
つまり、この映画の物語構造は『ロリータ』と同じなのであり、男性の父性が感情移入しやすい男性好みのストーリーなのだ。
そして、この世界観はもちろんリュック・ベッソンの世界観であり、その後『レオン』で見事にニューヨークの街の中に再現された。
このように、この映画は、実は映画史的にいろいろ意味があって、分析しがいのある作品なのだ。
まず、リュック・ベッソンの世界観がハリウッド映画のアメリカ的価値観でも成功できることを示した。
また、主役のブリジット・フォンダを始め、もともと実力がありながら単に有名ではなかっただけという力のある俳優がそろえられていて、この『アサシン』の成功で登場映画が多くなった。
しかし、一般映画ファンへのブレークのきっかけを最もつかんだのは、音楽のハンス・ジマーではないかと思う。
原作の『ニキータ』の音楽のエリック・セラのテイストを生かしつつ、アメリカ的でかつエモーショナルな音楽を作曲した。セラの真似ではなく、かといって別のものでもないという微妙なテイストになっていて、かつ、黒人風のシャウトを取り入れた音楽によってニーナ・シモンともよく融合させた離れ技は、多様な様式を使いこなすハンス・ジマーだからこそできた芸当だっただろう。
ジマーはこの『アサシン』以降に、独立した映画音楽集のアルバムを出したりしている。
細かいところを言えば、ストーリーに詰めの甘いところも多々あるが、ブリジット・フォンダの少女性と、ハンス・ジマーの音楽の斬新さと、ハリウッド的なアメリカ的な演出のスピード感とで成り立っている映画だといえる。
だから、フォンダとジマーとハリウッド的スピード感に魅力を感じなければ、ただのドタバタ映画と感じる人も少なくないのだろうと思う。