最近どんどんリリースされる”メイキング・オブ・エポック・メイキング・ミュージック”の一つ。デトロイト・テクノの創始者たちが「しゃべっている」姿を観ることができる。音楽監修は「テクノ」という言葉そのものを開発したオリジネイターのホワン・アトキンズ。しかし「それだけです」という中途半端な証言集。テクノの短い歴史すらもきちんと考証できていないし、その音楽が白人の「テクノロジー」と黒人「ソウル」の融合となった「機材の裏側」も分からない。ひたすら交互に証言とDJの現場映像が繰り返されるだけけだ。多少なりともテクノを好きなリスナーやDJには「ずっと前に分かっていたこと」しか出てこない。僕はもっとディープインサイドな哲学や機材の話があるかと思って観たが見当違いだった。
ということはテクノの入門編としてはいいかもしれない。「テクノ・ポップ」と「テクノ」が源泉を同じとしながらも全く別の哲学で作り出されたものだということはちゃんと分かるようになっている。
もう少しテクノを知っている(例えばモデル500やデレク・メイやURのレコードやCDを少なくとも1枚は持っている)人であればこれを観る必要はないだろう。むしろ「みんなクレイジーになっていく(名著”The night when a DJ saved my life”の邦訳)」や「ブラック・マシーン・ミュージック」の2冊を読むことを薦める。この2冊には著者や翻訳者のテクノに対する情熱と見識があふれているからだ。
このDVDでテクノを知った気にならないように。つっか、テクノはまだ20年の歴史しかない。知った気になれるほど煮詰まった音楽ではないしね。貴重品扱いするには早すぎる。