小・中・高を通し、宿題を一度もやって行った記憶のない超面倒臭がりの自分には、まるちゃんの気持ちが手に取るように分かります。家庭訪問の度、先生が母親に「この子は、やればできるんですから!」と説き聞かせるように語っていたのを思い出します。要は、できが悪かったと言うコトのようで・・・(笑)。夏休みの過ごし方も、まるちゃんとほぼ変わらなかったので、まるちゃんに感じる親近感は並大抵のモノではありません。
昭和の時代でも、コンプライアンス違反やハラスメントはありましたが、今程時間に追われなかった時代には、一人一人の許容力も高く、人間関係も希薄になり難かったように思えます。そう言った時代を過ごして来た世代には、この作品で表現されている緩やかな出来事が、まるで自分の子供時代をそのまま映し出した「思い出のビデオ」のようです。
10円で買えるお菓子、10円で動くマッサージ機、100万円あれば金持ちと言われ、3億円事件が起こった時には、どれぐらいの量なのかを真剣に考えてみた時代。今では笑ってしまうような単純なおもちゃ、赤電話や懐かしい童謡・・・「古き良き時代」ではなく、大きな空で入道雲がドンドン形を変えて行くのを、の~んびり見ていられた頃の「古き良き思い出」が沢山詰まっています。
もう何十年も前、「長生きは良いコトばかりじゃない」と語っている年寄がいて不思議に思ったモノですが、自分と感覚を分かち合える人間が、どんどん少なくなって行く寂しさは、経験する者にしか分からないでしょう。そう言った経緯から考えると、自分と同じ感覚を表現してくれているこの作品は、一つの大切な宝物です。もう亡くなってしまったとは言え、この作品を記録として残して下さった、さくらももこさんには本当に感謝です。
多くのモノが手に入らなかった時代、子供達には沢山の夢がありました。でも多くのモノに満たされてしまった今、子供達だけでなく世の人々の心がどうなってしまったのか・・・そこから学べる事は余りにも多いように思えます。
「ゆめいっぱい」は、いつ聴いても元気を貰える私の大好きな歌です。この作品を通して、沢山の人達が「切り取った時間の片隅」を体験し「忘れてた宝物」を見つけてくれたらなぁと思います。今の社会に求められているのは「笑顔の魔法」を知るコトなのかも知れません。