ザ・キュアーは私のフェイバリット・バンドの一つだ。
「40になったらやめる」とロバート・スミスが公言し、
デビュー以来所属していたフィクション・レーベルの
閉鎖が決まっていたことから、「ブラッド・フラワーズ」が
ラスト作になると、固く信じていたため、
本アルバムの奇跡のようなリリースは、素直にうれしい。
結成26年目、13枚目にあたる本作のリリースには
プロデューサーのロス・ロビンソンの存在が大きい。
キュアー・ファンの彼が、1年以上にわたるラブコールを
続けてくれたからだ。
アット・ザ・ドライブ・インを始め
多くのヘビー・ロックバンドを手がける彼は、
ザ・キュアーにバンドとしての側面を覚醒させ、
全てを背負い込んでいたロバート・スミスを
バンドの一員として解放することに成功している。
デビュー以来、ザ・キュアーが持ち続けていた
行き場のない怒り、焦燥感、虚無感をぶつけた
容赦なき凶暴性とエネルギー。
そして、比類無きメランコリー、ロマンシティズム。
それらを、ロス・ロビンソンの元で
さらけ出している。
40を過ぎたロバート・スミスが
「自分が見つからない」と叫び、
「僕はどこにも行かない」と泣く。
今、現在、
リアルタイムのザ・キュアーが
ここにいる。