柴草玲。
この人は、自らを「さげまん」と呼ぶ露悪的な部分もあるのだが、どうしてどうして、
身近な対象を、実に細やかな、そして優しい目で観察し、愛のある歌を創り、そして歌う、愛のある人だ。
彼女の、今のところ最も新しいアルバム『小唄婦人』は、街のペット屋や、五反田の焼鳥屋、沖縄のシーサー屋、行きつけの洋食屋でであった人々や犬、そしてベランダの植物や烏骨鶏、動物園の象など生きている対象物に対し、愛情が滲み出る視点で眺めている。
犬好きの私は2『さよならウンチ』で愛犬のLALAと出合った頃を思い出しほろっとさせられ、家に帰るなりLALAを抱きしめていた。この歌を聴いた涙もろい私のヨメは泣いていた。
このアルバムはFM栃木の彼女のラジオ番組『イヌラジ』の中の『イヌラジ小唄』というコーナーで、毎週産みだされて来た小唄の一部を、改めて宅録したものだ。
彼女の辛辣な視点で創られた歌もあるが、全体に流れるのは『愛』だ。
そして、特筆すべきは彼女の歌の素晴らしさ。
柴草玲は基本的にピアノ弾き語りの人で、それだけで音楽的に完成されたスタイルを確立しているので、彼女の歌を味わいたいのなら余計な装飾がない本作品がおススメだ。